人生の大きな選択

50年ローンは「世代をまたぐ契約」。月々の返済額だけで決めてはいけない

50年ローンは世代をまたぐ契約。住宅ローン契約書と砂時計、住宅をモチーフに、長期ローンのリスクと時間の重みを表現したアイキャッチ画像。
筒井直子|Money Compass 編集長

住宅価格の上昇を背景に、返済期間40年、50年の住宅ローンを扱う金融機関が増えています。返済期間を長くすれば、毎月の返済額は抑えられます。若いうちに住宅を購入しやすくなり、教育費や資産運用のために手元資金を残せることも大きなメリットです。しかし、「50年」という時間の長さは、契約前に一度立ち止まって考えてほしいと思います。

50年の間に、社会は何世代入れ替わるのか

「50年ローン」と聞いても、その長さは意外と実感しにくいものです。そこで、「世代交代」という物差しで考えてみましょう。厳密な定義ではありませんが、一般的には次のように考えられています。

  • 親子一世代……約25〜30年
  • 会社の経営陣……約20〜30年で大きく入れ替わる
  • 政治家や官僚の中心世代……約20〜30年
  • 音楽やファッション、働き方などの価値観……15〜20年でも大きく変化する

つまり、50年という時間は、親子なら約2世代、会社の経営陣は2回ほど交代、社会の常識や働き方も何度も変わることになります。

50年前の1976年を思い浮かべてください。インターネットはなく、スマートフォンもありません。銀行取引は窓口が中心で、終身雇用が当たり前、副業という考え方もほとんどありませんでした。そこから現在まで、日本社会は大きく変化しました。

25歳で50年ローンを組めば、完済は75歳。契約した頃には想像もしない社会で、ローンだけ続いているかもしれません。50年ローンは単なる住宅ローンではなく、「世代をまたぐ契約」と考えるべきではないでしょうか。

※フラット50の利用条件や対象住宅は、住宅金融支援機構の公式ページで確認できます。

建物は税法上ゼロになる。それでもローンは残る

日本では建物は減価償却資産とされ、木造住宅は22年、鉄筋コンクリート造は47年の法定耐用年数が定められています。詳しくは国税庁の耐用年数表をご覧ください。

22年、47年で住めなくなるわけではありません。適切に維持管理すれば、50年、60年、それ以上住み続けられる住宅も数多くあります。しかし、税法上、建物価値は徐々に減価償却され、最終的には帳簿上ゼロになります。

つまり、建物の帳簿上の価値はゼロになっても、住宅ローンだけは残っている。そんな状態が起こり得ます。もちろん、立地の良い土地には資産価値がありますし、中古住宅市場では実際の売買価格が法定耐用年数だけで決まるわけでもありません。

それでも、「建物の価値」と「借金の残高」は別物であることは知っておきたいポイントです。

もちろん、50年ローンにはメリットもある

ここまで読むと、「50年ローンは危険なのか」と思われるかもしれません。しかし、メリットもはっきりしています。

毎月の返済額を抑えられる

最大のメリットは、月々の負担を軽くできることです。住宅価格が高騰する中、返済額を抑えられることで無理のない家計を維持しやすくなります。

手元資金を残せる

住宅購入時に自己資金を使い切らずに済めば、教育費や急な出費にも対応しやすくなります。生活防衛資金を確保できることは、家計にとって大きな安心材料です。

繰り上げ返済という選択肢がある

最初は50年で借り、収入が増えたら繰り上げ返済するという考え方もあります。返済期間を長く設定しておけば、ライフイベントに応じて返済ペースを調整できます。「50年間返し続けるための商品」というより、「返済計画に柔軟性を持たせる商品」と考えることもできます。

50年後の世界は、誰にも予測できない

忘れてはいけないのは利息です。返済期間を延ばせば、それだけ利息を支払う期間も長くなります。毎月の返済額は減っても、総返済額は増えるのです。

変動金利を選んだ場合、現在の返済額だけを見て「これなら払える」と判断するのは危険です。住宅ローン金利が動けば、家計への影響は数年ではなく、数十年にわたって続く可能性があります。

日本では長く超低金利が続いたため、「金利はほとんど動かないもの」という感覚を持つ人も少なくありません。しかし、金利が上がると住宅ローンだけでなく、預金、債券、企業活動、株価など、お金をめぐるさまざまな条件が変わります。

50年ローンを考えるなら、「今の金利」だけを見るのではなく、そもそも金利が動くと私たちの生活や資産形成に何が起きるのかを知っておくことも大切です。ぜひ、こちらの記事もあわせてご覧ください。

【関連記事】 「金利のある世界の歩き方」― 金利上昇で私たちのお金はどう変わる? 

転職、独立、転勤、介護、子どもの独立。人生は予想以上に変化します。50年ローンは、親子二世代に近い契約です。会社も変わります。社会も変わります。自分自身の価値観も変わります。50年という時間まで借りるからこそ、人生全体で考える必要があります。

参考資料】

住宅金融支援機構(フラット50)
住宅金融支援機構「繰上返済」
国税庁「減価償却のあらまし」

※本記事について
本記事は、50年住宅ローンなど長期の住宅ローンについて、一般的な金融・家計管理の観点から解説したものです。50年ローンそのものを否定するものではなく、返済期間を長くすることで毎月の返済額を抑えられるメリットもあります。一方、借入額や金利等の条件が同じであれば、返済期間が長くなるほど一般に利息負担や総返済額は大きくなります。また、変動金利の場合は将来の金利上昇によって返済負担が変わる可能性があります。実際の借入条件、金利、団体信用生命保険、完済時年齢、繰上返済等の条件は金融機関や商品によって異なります。住宅ローンを検討する際は「月々いくらなら払えるか」だけでなく、総返済額、完済時年齢、退職後の収入、教育費など将来の家計も含めて判断してください。

ABOUT ME
筒井直子|Money Compass 編集長
筒井直子|Money Compass 編集長
出版社勤務30年以上/Money Compass 編集長
慶応義塾大学卒業後、大手出版社で30年以上、編集者として書籍・雑誌に携わってきました。Money Compassでは、家計・投資・教育費・税金・制度など、人生のお金に関わるテーマを、公的機関や一次情報を確認しながら生活者の目線でわかりやすく解説しています。
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