ローン

分割払いは借金です。「月々○円」で見えなくなる、わが家の本当の負債総額

分割払いやローンの仕組みを解説し、「月々○○円」という表示では見えにくい本当の負債総額を説明するMoney Compassのアイキャッチ画像
moneycompass_admin

「分割払いは借金と同じだから、一括で買ったほうがいい」。そんな話を聞いたことはないでしょうか。しかし、最新のiPhoneは機種や容量によっては20万円前後になります。携帯電話会社の店頭では、一括で支払う人より、月々8,000円程度を2年で購入する人のほうが多いかもしれません。

たしかに、ドコモ、au、ソフトバンクなど大手キャリアの端末分割払いは、多くの場合、実質年率0%、分割手数料無料です。20万円の商品を24回で支払っても、基本的には支払総額は20万円です。一括でも分割でも同じではないかと思うでしょう。

金利や手数料だけを見れば、携帯端末の分割払いに問題はなさそうです。しかし、分割払いは単なる支払い方法の変更ではありません。信用を使って商品を先に受け取り、代金を将来にわたって支払う契約です。分割払いを利用するうえで本当に知っておきたいのは、自分がいくらの返済義務を抱えているのか、その全体像を把握しているかという点です。

スマホ分割払いは信用情報機関に登録される

iPhoneを20万円で購入し、24回払いにするとします。本来なら購入時に20万円を支払うところを、販売会社や信販会社などに代金を立て替えてもらい、毎月少しずつ返済していきます。現金そのものを借りるカードローンとは契約の形が異なりますが、「信用を使って今購入し、代金を後から支払う」という意味では、借入とよく似た仕組みです。

スマートフォンの端末代金を分割払いにすると、一般に審査が行われ、契約内容や支払い状況が信用情報機関に登録されることがあります。日本の代表的な信用情報機関にはCICやJICCがあり、クレジットカード、各種ローン、分割購入などの契約情報や返済状況を管理しています。記録される可能性があるのは、契約した事実、契約金額、毎月の支払い状況、残高、完済したかどうかなどです。これらの履歴は、一般に信用情報やクレジットヒストリー(略してクレヒス)と呼ばれます。

もちろん「信用情報に載ること」と「ブラックリストに載ること」は同じではありません。そもそも「ブラックリスト」という名前の名簿は存在しません。分割払いを利用すれば、その契約情報が登録されるとはいえ、それ自体は珍しくありません。iPhoneを24回払いで購入し、毎月遅れずに支払い、予定どおり完済すれば、それは約束どおり支払った履歴になります。分割払いを使っただけで、住宅ローンや自動車ローンに不利になるわけではありません。

問題になるのは、支払い遅延や滞納です。スマホの端末代金と通信料金をまとめて支払っている場合、口座残高不足などで引き落としができないと、端末代金の分割分まで延滞する可能性があります。「携帯料金の支払いが少し遅れただけ」と考えていても、その中に割賦契約の返済が含まれていれば、信用情報に影響することがあるのです。

住宅ローン審査では、金融機関は申込者の年収や勤務先、物件の価値だけでなく、信用情報も確認します。自動車ローン、教育ローン、カードローン、クレジットカードの分割・リボ残高、スマホ端末の分割契約なども、審査の判断材料になり得ます。

スマホ1台の料金滞納だけで住宅ローンに通らなくなるとは通常考えにくいものの、複数のローンが重なっている、リボの残高が多い、過去に支払い遅延を繰り返している、といった事情があれば、返済能力を慎重に見られる可能性があります。

一括払いなら、新たな分割契約を増やさずに済み、将来の支払いを管理する必要もなく、口座残高不足による支払い忘れも起こりません。金利や手数料が発生する契約なら、それも避けられます。20万円を支払っても生活防衛資金が十分に残り、家計に影響がないなら、一括払いは最も単純で管理しやすい方法です。

とはいえ、分割払いが悪いわけでもありません。手元の現金を緊急資金として残しておく必要があるなら、資金管理上は合理的な場合もあります。お金に余裕のある人でも、0%の分割払いを選ぶことはあります。大切なのは「一括で買えるけれど、資金を手元に残すために分割する」のか、「一括では買えないため、分割しないと購入できない」のかという違いです。同じ24回払いでも、前者は資金配分の選択であり、後者は将来の収入を前提にした背伸びかもしれません。

また、「いつでもカエドキプログラム」など、一定期間後に端末を返却すると残りの支払いの一部が不要になる仕組みは、通常の単純な24回払いとは別に考える必要があります。こうした制度は、端末に残存価値を設定し、返却を条件に将来分の支払いを免除する、残価設定型に近い仕組みです。毎月の負担は小さく見えますが、返却が前提であり、端末の破損状態や査定条件によって追加負担が生じる場合があります。返却せずに使い続けるなら、残価相当額を支払う必要があります。「安く買えた」というより、一定期間使用した後に返すことを前提として、毎月の負担が抑えられていると理解したほうが正確です。

家、車、スマホ、奨学金、リボ払い。借金総額は?

分割払いの本当の問題は、借金総額から目をそらし、複数の負債を「別々の問題」と考えてしまうことです。

たとえば、ある家庭が4,500万円の住宅ローンを抱えているとします。マイホームを購入すると、それに合わせて新しい車が欲しくなり、350万円のカーローンを組む。家族4人がそれぞれ高価格帯のスマートフォンを分割で購入し、端末代金の残高が合計80万円ある。子どもの大学進学には教育ローンや奨学金を利用し、将来返済する金額が300万円ある。日常の買い物ではリボ払いを使い、残高が50万円ある。これらを合計すると、将来返済しなければならない金額は5,280万円です。

しかし、本人の頭の中では、これらが一つの借金として認識されていないことがあります。「住宅ローンは家を買うためだから仕方がない」「車は生活に必要」「スマホは月々数千円」「奨学金は子どもが卒業後に返すもの」「リボ払いは毎月1万円だけ」と、それぞれ別の理由で正当化されるからです。

住宅ローン4,500万円という数字には慎重でも、スマートフォンの分割80万円は「通信費」のように感じ、リボ残高50万円は「カードの支払い」として捉えてしまいます。契約の名称が違い、請求日が違い、返済期間も違うため、すべてが同じ「返済義務」であることが見えにくくなるのです。

毎月の支払額だけを見ると、さらに危機感は薄れます。住宅ローンが月12万円、カーローンが月3万円、スマートフォンが月8,000円、奨学金が月2万円、リボ払いが月1万円なら、「全部合わせても毎月18万円前後。今の収入なら払えている」と考えるかもしれません。しかし、本当に見るべき数字は、今月払えるかではありません。「自分の家計は、現時点で合計いくらの返済義務を負っているのか」「その返済は何年続くのか」「収入が減っても支払いを継続できるのか」という数字です。

特に注意したいのは、住宅購入など大きな契約をした後です。数千万円の住宅ローンを組むと、数百万円の車や数十万円のスマホが相対的に小さく見えることがあります。4,500万円の住宅に比べれば、350万円の車は「それほど高くない」と感じ、20万円のスマートフォンは「誤差の範囲」のように思えるかもしれません。しかし、金額の大小にかかわらず、すべて将来の家計から支払う必要があります。大きな借金をした後に小さな借金への感覚が鈍くなると、負債は静かに積み重なります。

また、住宅ローン、教育費、リボ払いは、同じ借金でも性質が異なります。住宅ローンは、自宅という資産を取得するための借入です。ただし、購入価格と現在の売却価格が同じとは限らず、売却代金よりローン残高のほうが多ければ、家を売っても借金が残る可能性があります。

教育費は、本人の学びや将来の収入につながる可能性がありますが、収入増加が保証されるわけではありません。スマホや車は日常生活に役立つ一方、時間とともに価値が下がります。

そしてリボ払いは、高い手数料を払い続ける仕組みになりやすく、支払いを続けても資産が残らない場合が多い借金です。すべてを「借金だから悪い」と同列に扱う必要はありませんが、性質が違うからといって合計しなくてよいわけでもありません。負債としては、まず全額を一覧にしたうえで、それぞれの金利、目的、残存期間、資産価値を比較する必要があります。

行動経済学でみる「負債が見えなくなる」仕組み

借金の総額を把握していない人が多いのは、家計管理が苦手だからではありません。人間の意思決定には、もともと全体像よりも目の前の分かりやすい数字に反応しやすい性質があります。行動経済学では、人は必ずしに合理的な判断をするわけではなく、表示方法や思い込み、感情、時間の捉え方によって判断が変わることが示されています。

代表的なのが「メンタル・アカウンティング」、日本語では「心の会計」と呼ばれる考え方です。人は、自分のお金を本当は一つの家計として管理すべきなのに、頭の中で別々の財布に分けます。住宅のお金、車のお金、教育のお金、通信費、趣味、クレジットカードというように分類し、それぞれを独立して考えます。そのため、「住宅ローンは住宅の箱」「スマートフォンは通信費の箱」「奨学金は教育費の箱」「リボ払いはカードの箱」に入り、負債総額という一つの数字に統合されません。それぞれの箱の中では支払可能に見えても、家庭全体では返済余力が失われていることがあります。

次に、「フレーミング効果」があります。同じ商品でも、どのような表現で示されるかによって印象が変わります。「このiPhoneは20万円です」と言われるより、「24回払いなら月々約8,300円です」と言われるほうが、負担を小さく感じます。自動車の残価設定ローンや住宅ローンでも、総支払額より「月々○万円」を強調した広告が多いのはそのためです。

「アンカリング効果」も影響します。人は最初に示された数字を基準に、その後の判断をしやすい傾向があります。例えば、最初に「一括価格20万円」と言われた後、「月々8,300円」と聞けば、とても小さな金額に感じます。住宅展示場で高額な物件を見た後なら、数百万円のオプションや家具、自動車が相対的に安く感じられることもあります。大きな数字が基準になると、本来なら慎重に考えるべき金額まで「それほど大きくない」と錯覚しやすくなります。

さらに「現在維持バイアス」。人は将来の負担より、今得られる満足や便利さを強く評価しがちです。最新スマホを今日から使える満足に浸り、18か月後も支払いが残っている負担がどこか他人事。「来年は昇給しているだろう」「ボーナスで払えるだろう」「子どもが卒業すれば家計が楽になるだろう」と考えるのは、「楽観バイアス」の影響でもあります。人は、自分の将来について、収入の減少、病気、介護、物価上昇、金利上昇といった不都合な事態を過小評価しやすいのです。

借金の全体像を見失うのは、意志が弱いからだけではありません。商品や金融サービスが、私たちの心理を研究しつくして設計されているからです。「月々○円」「今なら負担なし」「返却すれば残りの支払い不要」「毎月の支払額は一定」という言葉は便利である一方、総額、残高、返済期間、条件という重要な情報から注意をそらします。消費者側が意識して数字を総額に戻す必要があります。

ABOUT ME
「マネーコンパス編集部」では、お金のしくみや制度をできるだけわかりやすく解説しています。知らないと損するお金の話を、シンプルに伝えるのがテーマです。
記事URLをコピーしました