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保険は2つでいい? 公的保障を知れば、民間保険はここまで減らせる

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筒井直子|Money Compass 編集長

「医療保険にも入っている。がん保険もある。でも、生命保険、学資保険も……」。将来が不安だからと、すすめられるまま保険を増やしていく。気づけば毎月数万円の保険料を払い、家計を圧迫している。

保険を考えるときに最初に確認すべきなのは、民間保険の商品ではありません。すでに自分が加入している「公的保険」です。

金融庁も、民間保険には公的保険を補完する役割があるが、まず公的保障の内容を理解したうえで、必要に応じて加入することが重要だとしています。

つまり順番は、公的保障を確認する → 自分の貯蓄で負担できる範囲を考える → それでも背負えないリスクだけ民間保険で補う です。

この記事では、あえて「究極的には火災保険と自動車保険でいい」というところから、保険の本質を考えてみます。家族構成、資産、住宅、働き方などによって必要な保障は異なります。「すべての人が2つだけでよい」という意味ではありません。

そもそも、保険は何のためにあるのか

保険の本来の役割は、発生する確率は高くなくても、起きたときに自分の資産だけでは到底負担できない損失を、多くの人で分担することです。

たとえば数万円、数十万円の出費なら、一定の貯蓄があれば自分で対応できます。しかし、自宅が全焼した、重大な交通事故を起こして高額な賠償責任を負った、といった事態は別です。

「起きたらちょっと困る」ではなく、「起きたら、自分では背負えない」という観点で考えるのです。不安な出来事すべてに保険をかけようとすれば、保険料はいくらあっても足りません。

優先度が高い保険① 火災保険

住宅は、多くの人にとって生活の基盤です。火災だけでなく、契約内容によって風災、水災、盗難などの損害を補償する火災保険は、大きな資産や生活基盤を守るという意味で、保険本来の目的に合いやすい商品です。

持ち家なのか賃貸なのか、マンションなのか戸建てなのか、家財はいくらあるのか、水害リスクの高い場所なのかによって必要な補償は変わります。

また、非常に重要なのが地震です。通常の火災保険では、地震を原因とする火災や津波などによる損害は原則として補償されません。地震への備えを必要とする場合は、火災保険に付帯する地震保険を別途検討する必要があります。「火災保険に入っているから地震も大丈夫」と思い込まないことが大切です。

優先度が高い保険② 自動車保険

車を運転する人にとって、もう一つ優先順位が高いのが任意の自動車保険です。すべての自動車には自賠責保険への加入が義務付けられています。しかし、自賠責保険が補償するのは、基本的に事故の相手方の人的損害であり、支払限度額もあります。

死亡事故の場合、自賠責保険の支払限度額は被害者1人につき最高3,000万円です。相手の車や建物などを壊した場合の対物損害は自賠責保険では補償されません。

重大事故では、自賠責保険だけでは賠償額をカバーできない可能性があります。そのため車を運転する人は、任意保険の対人賠償・対物賠償を十分な金額、一般には無制限で設定することを検討する価値が高いでしょう。

これは「数万円の損失を取り戻す保険」ではありません。自分では負担できないほど大きな賠償リスクを移転するための保険です。

日本には、すでに大きな「公的保険」がある

民間保険を考える前に知っておきたいのが、日本の社会保障制度です。私たちは保険料や税金を負担する一方で、病気、けが、障害、死亡、介護、失業などに対するさまざまな公的保障を受けています。

代表的なものだけでも、健康保険・国民健康保険、高額療養費制度、傷病手当金(主に会社員など一定の被用者保険加入者)、労災保険、障害年金、遺族年金、介護保険、雇用保険などがあります。

金融庁が、公的保険を理解してから民間保険を検討するよう案内しているのは、このためです。民間保険だけを見ていると、「病気になったらどうしよう」「働けなくなったらどうしよう」「死亡したら家族はどうしよう」と、それぞれに保険商品が必要なように感じます。しかし、その一部はすでに社会保障でカバーされています。

医療保険を考える前に「高額療養費制度」を知る

民間医療保険を考えるうえで特に重要なのが、高額療養費制度です。日本では公的医療保険に加入していれば、医療機関等で支払う保険診療の自己負担額が一定額を超えた場合、超過分が支給される仕組みがあります。

2026年8月から制度が見直されており、厚生労働省によれば、70歳未満で年収約370万円~510万円の場合、医療費100万円の治療を受けても、自己負担額は約9.3万円に抑えられる例が示されています。

つまり、「医療費100万円=自分で30万円を最終的に負担する」とは限らないのです。さらに2026年8月からは、長期療養者などへの配慮として年間上限も設けられました。

高額療養費制度にも注意点があります。差額ベッド代、入院時の食事代、先進医療など保険診療の対象外となる費用は、高額療養費制度の対象にならない場合があります。また、自己負担限度額は年齢や所得によって異なります。

「日本では医療費が一切心配ない」という意味ではありませんが、自分の場合に公的制度でどこまでカバーされ、残りを貯蓄で負担できるかを先に計算しましょう。

民間の医療保険はいらないのか

一律に「不要」とまでは言えませんが、十分な生活防衛資金があり、高額療養費制度などを理解している人であれば、「保険料を長期間払い続けるより、その分を自分で貯蓄しておく」という選択も十分考えられます。自分が保険会社に移転する必要のあるリスクは何かを考えるところです。

月1万円の保険料は、30年で360万円

月1万円の保険料なら、1万円 × 12か月 × 30年 = 360万円です。夫婦で複数の保険に加入していれば、総額はさらに大きくなります。

もし、同じ月1万円を30年間、年3%で積み立て運用できたとすれば、単純なシミュレーションでは約580万円になります。その保障に30年間で360万円を支払う価値があるかどうかは考えどころです。

「使わなかったから損」ではない

保険に入って30年間何も起きなければ、「保険料を損した」と感じるかもしれません。本来それは保険の評価方法ではありません。自動車保険を使わずに済んだからといって、「事故を起こせばよかった」とは誰も思いません。

保険は利益を得る商品ではなく、大事故が起きたときに家計が破綻するリスクを避ける商品だからです。考えるべきは、そもそも自分で負担できる程度のリスクにまで、高い保険料を払い続けていないかです。

貯蓄型保険は「保障」と「資産形成」を分けて考える

終身保険、学資保険、個人年金保険などには、保障機能と貯蓄機能を組み合わせた商品があります。しかし、保障と資産形成が一体になると、保険料のうち何円が保障に使われているのか? 実質的な利回りはいくらなのか? 途中解約するといくら戻るのか? いつまで資金が拘束されるのか? が分かりにくくなることも。

特に途中解約では、払込保険料を下回る解約返戻金しか受け取れない期間がある商品もあります。資産形成が目的なら、預貯金やNISAなど他の手段と比較し、「保険でなければならない理由があるか」を確認したいところです。

学資保険には「強制貯蓄」という意味もある

学資保険も、利回りだけで評価すれば他の資産形成手段が有利になる場合があります。それでも学資保険を選ぶ合理性がまったくないわけではありません。毎月自動的に保険料が引き落とされ、途中で簡単に使えないため、教育資金を半強制的に確保できるという行動面でのメリットがあるからです。

自分で積み立てた預金を使ってしまいやすい人にとっては、「簡単には使えない」こと自体が価値になる場合があります。金融商品は、利回りだけでなく人間の行動特性との相性も含めて考える必要があります。

生命保険は「自分が死んだら誰が経済的に困るか」で考える

生命保険も、全員に同じ金額が必要なわけではありません。自分が死亡したとき、残された家族にいくら不足するのかを冷静に計算することです。

子どもが小さく、家計の大部分を自分の収入に依存している家庭なら、大きな死亡保障が必要になることがあります。一方、子どもが独立し、夫婦それぞれに収入や十分な金融資産がある家庭なら、必要保障額は小さくてもよいかもしれません。

公的年金には一定の要件を満たす遺族に支給される遺族基礎年金・遺族厚生年金があります。生命保険も、必要生活費 − 遺族年金などの公的保障 − 配偶者の収入 − 預貯金などの資産という順番で不足額を考えるのが基本です。

死亡保障が必要なら、貯蓄機能を大きく持たせず、一定期間の大きな保障を比較的低い保険料で確保できる定期保険・収入保障保険などが候補になることもあります。

医療費より「働けなくなること」が大きなリスクの

病気になったとき、問題になるのは医療費だけではありません。数か月、あるいは長期間働けなくなれば、収入そのものが減る可能性があります。

会社員など一定の健康保険加入者には、業務外の病気やけがで働けず、給与を十分受けられない場合に傷病手当金が支給される制度があります。支給期間は同一の傷病について通算1年6か月です。

自営業者などは加入する公的制度が異なり、会社員と同じ保障を受けられるとは限りません。病気になったら医療費はいくらか。収入はいくら減るか。公的保障はいくら受けられるか。貯蓄で何か月生活できるかまで見る必要があります。

保険は「安心」ではなく固定費として見る

保険を契約するとき、年間保険料と払込期間全体の総額を見る習慣をつけたいところです。十分な貯蓄があり、扶養家族が少なく、公的保障を理解している人なら、住まいを守る火災保険重大な賠償責任を守る自動車保険の2つでも十分かもしれません。

逆に、小さな子どもがいて世帯収入を一人に大きく依存している、自営業で所得保障が弱い、住宅ローンなど大きな固定費がある、特殊な医療リスクを抱えているといった場合は、生命保険、医療保険、就業不能保険などを追加する合理性もあります。

不安から保険を考え始めれば、必要に見える商品はいくらでも増えていきます。保険を増やすことが安心なのではありません。自分が何に、いくら備える必要があるのかを理解していることこそ、本当の安心です。

【参考サイト】

金融庁「公的保険ポータル」

厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

厚生労働省「医療保険制度改正法が成立しました」

日本年金機構「遺族年金」

厚生労働省「傷病手当金の支給期間が通算化されます」

国土交通省「自賠責保険・共済ってどんなもの?」

財務省「地震保険制度の概要」

金融庁「顧客本位の業務運営について」

※この記事は、保険や社会保障制度について一般的な情報を提供することを目的としたものであり、特定の保険商品の加入・解約・変更を推奨するものではありません。

必要な保障は、年齢、家族構成、職業、勤務形態、収入、金融資産、住宅の所有状況、既往歴、公的保険の加入状況などによって異なります。生命保険・医療保険等を解約すると、健康状態などによっては将来同じ条件で再加入できない場合があります。既存契約を変更・解約する際は、保障内容、解約返戻金、再加入の可否などを十分に確認してください。

また、公的保険制度や給付額、所得区分等は改正されることがあります。本記事は2026年8月時点の公表情報をもとに作成しています。実際に制度を利用する際は、厚生労働省、金融庁、日本年金機構、加入している健康保険組合・協会けんぽ、自治体などの最新情報をご確認ください。

ABOUT ME
筒井直子|Money Compass 編集長
筒井直子|Money Compass 編集長
出版社勤務30年以上/Money Compass 編集長
慶応義塾大学卒業後、大手出版社で30年以上、編集者として書籍・雑誌に携わってきました。Money Compassでは、家計・投資・教育費・税金・制度など、人生のお金に関わるテーマを、公的機関や一次情報を確認しながら生活者の目線でわかりやすく解説しています。
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