亡くなった親が株を持っていた。でも証券会社がわからない。『ほふり』で調べる方法
親が亡くなり、遺品を整理していたら、配当金計算書が出てきた。「どうやら株を持っていたらしい。でも、どこの証券会社なのかわからない・・」
そんなとき、調べる方法があります。
「ほふり」と呼ばれる証券保管振替機構(JASDEC)に「登録済加入者情報の開示請求」をすることで、亡くなった人が、どの証券会社や信託銀行などに口座を開設しているのかを確認できる場合があります。相続人からの請求も可能です。
銀行口座を探す方法は比較的知られるようになってきましたが、「証券会社がわからないときの探し方」は、意外に知られていません。ただし、この制度には大切な注意点があります。
「ほふりに聞けば、亡くなった人の金融資産が全部わかる」わけではありません。ほふりで確認できるのは、原則として開示時点の口座開設先情報です。「5年前にどこの証券会社に口座を持っていたか」といった過去の特定時点の口座情報を調べる制度ではありません。また、開示結果に証券会社が出てきても、現在そこに株式残高があるとは限りません。
「ほふり(証券保管振替機構)」とは?
「ほふり」は、証券保管振替機構(JASDEC)の通称です。
現在、上場株式は電子化されており、証券会社などに開設された口座を通じて株式が管理されています。証券保管振替機構には、発行会社が株主名簿を作成するための仕組みの一環として、証券会社等から投資家の氏名・住所・口座の所在などの情報が登録されています。
この情報を「登録済加入者情報」といい、本人だけでなく、その人が亡くなった場合には相続人も開示を請求できます。
つまり、「父が株を持っていたのは間違いない。でも、どこの証券会社かわからない」という場合に、証券会社探しの手がかりになるわけです。
わかるのは「証券会社」まで
ほふりへの開示請求で確認できるのは、開示時点で対象となる株式等の口座が開設されている証券会社、信託銀行等の一覧などです。
一方、どの会社の株を持っているのか、何株持っているのか、現在いくらの価値があるのか、過去にどんな売買をしたのかといった情報は、ほふりの開示結果ではわかりません。開示結果から、「○○証券に口座がある」ことが判明したら、次はその証券会社に相続人として連絡し、残高や保有銘柄などを確認することになります。
ほふりは「財産そのものを調べる場所」というより、「株式等が置かれている証券会社を探す場所」と考えるとわかりやすいでしょう。
すべての証券資産がわかるわけではない
開示制度の対象となるのは「振替株式等」です。振替株式とは、国内の上場株式のほか、REITやETFなど、ほふりの株式等振替制度で電子的に管理されている一定の金融商品です。
一方、証券保管振替機構は、今回の開示請求では外国株式、国債、社債などの口座開設先は確認できないと明記しています。また、一般的な投資信託についても、「登録済加入者情報の開示請求」で対象となる株式等とは別の仕組みで管理されているものがあります。
たとえば親が、「オルカンを持っていた」「S&P500の投資信託を買っていた」
「米国株を持っていた」という場合、ほふりへの開示請求だけで財産調査を終えてはいけません。
特にNISAでは、国内株だけでなく投資信託や外国株式などを保有していることもあります。「ほふりの結果に証券会社が出てこなかった=証券資産がない」とは言い切れないのです。
昔の株なら「特別口座」が見つかることも
一方で、ほふりの開示請求が役立つ意外なケースがあります。それが「特別口座」です。2009年の株券電子化以前から株式を持っていて、証券会社への預託など必要な手続きをしていなかった場合、株主名簿管理人である信託銀行などに「特別口座」が開設されていることがあります。
証券保管振替機構(ほふり)の開示請求では、証券会社の口座だけでなく、株券電子化の際などに信託銀行等に開設された「特別口座」も確認の対象になります。
親がかなり昔から株式を保有していた場合、株券を証券会社に預けないまま電子化を迎え、特別口座で管理されている可能性があります。「証券会社の口座は見つからないのに、企業から配当金の案内や株主関係の書類が届いていた」という場合は、特別口座に株式が残っていないか確認してみる価値があります。
相続人はどうやって請求する?
亡くなった人の口座を調べる場合、証券保管振替機構へ直接、郵送で開示請求を行います。窓口での受付や電話による開示結果の回答は行われていません。
法定相続人が請求する場合、主に、
- 登録済加入者情報開示請求書
- 請求する相続人の本人確認書類
- 法定相続情報一覧図、または被相続人との関係を確認できる戸籍等
- 被相続人の住所を確認できる書類
などが必要です。
被相続人の住所確認には、戸籍の附票や本人確認書類のほか、議決権行使書や配当金計算書など、故人宛ての株式関係書類を利用できる場合もあります。
何度も引っ越しているなら「旧住所」が重要
ほふりでは、被相続人の氏名と住所などをもとに登録情報を検索します。そのため、現在把握している最後の住所だけでは、昔開設した証券口座がうまく見つからない可能性があります。
親が長年投資をしていて、「東京に来る前は大阪に住んでいた」「結婚前の旧姓で株を持っていた可能性がある」といった場合には、戸籍の附票や古い配当通知などを確認しておくとよいでしょう。これは、検索精度を上げるうえでかなり重要です。
費用は? 結果が出るまでどのくらい?
2026年8月時点で、法定相続人による開示請求は1件6,050円(税込)です。ただし、法務局が発行する「法定相続情報一覧図」のコピーを提出した場合は、現在は4,950円(税込)となっています。なお、2026年10月1日から料金改定が予定されています。
10月1日以降の消印では、
- 法定相続情報一覧図あり:6,050円
- 法定相続情報一覧図なし:7,700円
となる予定です。同一人物について旧住所など複数の調査対象を追加する場合の追加料金は、1件1,100円です。
また現在、開示請求が混み合っており、証券保管振替機構は、書類に不備がなくても受付から結果発送まで2か月ほどかかると案内しています。相続が発生してから「そのうち調べよう」と後回しにしないほうがよい理由の一つです。
証券会社が判明したら
証券会社が判明したら、被相続人が亡くなったことを伝え、相続手続きを進めます。
NISA口座を持っていた場合も注意が必要です。日本証券業協会は、NISA口座の資産を相続した人は、被相続人の死亡を知った後、遅滞なく「非課税口座開設者死亡届出書」をそのNISA口座の金融機関へ提出する必要があると案内しています。
また、相続税の申告が必要な場合、期限は原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内です。上場株式には相続税上の評価方法も定められています。
さらに借金を含めて相続するかどうか判断できない場合には、相続放棄等の熟慮期間が原則3か月であることにも注意が必要です。財産調査に時間がかかる場合には、家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てる制度があります。
【参考サイト】
- 証券保管振替機構「登録済加入者情報の開示請求」
- 証券保管振替機構「ご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認したい場合」
- 証券保管振替機構「相続人用・登録済加入者情報の開示請求に係る手続」
- 証券保管振替機構「登録済加入者情報の開示請求―よくあるお問い合わせ」
- 日本証券業協会「NISAのよくある質問」
- 国税庁「上場株式の評価」
- 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」
- NISA口座を開設している投資家の方が亡くなった場合の手続
※本記事は2026年8月18日時点の公表情報をもとに作成しています。開示請求の対象、必要書類、料金、所要期間などは変更される可能性があります。実際に手続きを行う際は、証券保管振替機構および該当する証券会社等の最新情報をご確認ください。相続税や相続放棄、遺産分割など個別の法務・税務判断については、必要に応じて税理士、司法書士、弁護士等の専門家にご相談ください。
