退職後に驚く「健康保険料」の真実 会社が払っていた半分を知っていますか?
退職後、多くの人が最初に驚くのがお金の問題です。その中でも特に「こんなに高いの?」という声が多いのが国民健康保険料です。
現役時代は給与から天引きされていたため、健康保険料を意識する機会はほとんどありません。しかし、退職して初めて、自分が実際にどれだけの保険料で医療保険制度を支えていたのかを知ることになります。
「国民健康保険」と「国民年金」は全く別の制度
まずは、基本中の基本から。名前が似ているため混同されがちですが、国民年金と国民健康保険は全く違います。
国民年金
国民年金は全国一律で月17,920円。年額で215,040円(17,920円×12か月)。対象は、自営業者、フリーランス、学生、退職後に厚生年金から外れた人などの国民年金第1号被保険者です。
国民健康保険料
国民健康保険料は所得や加入人数、年齢、自治体によって変わります。
| 年収 | 年間保険料(目安) |
|---|---|
| 200万円 | 約18万円 |
| 300万円 | 約29万円 |
| 500万円 | 約52万円 |
| 700万円 | 約74万円 |
| 1,000万円 | 約100万円 |
| 2,000万円以上 | 113万円(上限) |
※単身世帯・東京都を参考にした概算です。実際の保険料は自治体や世帯構成などにより異なります。
会社員は健康保険料の「半分」しか払っていない
会社員が加入する健康保険(協会けんぽや健康保険組合)は、保険料を会社と従業員が半分ずつ負担しています。
たとえば、年間の健康保険料が50万円なら、自分が支払うのは25万円、残り25万円は会社が負担しています。しかも給与から天引きされるため、多くの会社員は「健康保険の本当のコスト」を知らないまま働いているのです。
退職すると国民健康保険は全額自己負担
退職して国民健康保険へ加入すると、会社負担はなくなります。さらに保険料は前年の所得を基に計算されるため、退職して収入が減っても、会社員時代の年収を基準に高い保険料を請求されることがあります。
ただし、所得に比例して増え続けるのではなく、年収が2,000万円でも5,000万円でも、国民健康保険料(2026年度)は、年間113万円(40~64歳)が上限です。
任意継続と国民健康保険、どちらが得?
会社を退職した後、健康保険をどうするかは、多くの人が最初に悩む問題です。選択肢は主に2つあります。
- 退職前の健康保険をそのまま続ける「任意継続」
- 市区町村の「国民健康保険」に加入する
任意継続とは?
任意継続とは、退職後も会社員時代の健康保険を退職日の翌日から最長2年間継続できる制度です(※利用するには退職日の翌日から20日以内に申請する必要があります)。会社が負担していた保険料はなくなるため、保険料は全額自己負担になりますが、国民健康保険より安くなるケースも少なくありません。
大企業などで手厚い健康保険組合(組合健保)に加入していた人は、任意継続のほうが有利になるケースがあります。保険料だけでなく「給付内容」まで比較することが重要です。たとえば、健康保険組合によっては次のような「付加給付」があります。
- がんなどで高額な医療費がかかった場合、自己負担額をさらに軽減
- 高額療養費制度の自己負担を独自に引き下げる
- 人間ドックや健康診断の補助
- 出産や傷病に関する独自給付
- 保養所やスポーツ施設などの福利厚生
- 一方、国民健康保険には、このような付加給付は基本的にありません。がんなどで高額な医療費がかかる可能性がある人は、保険料だけでなく、給付内容まで比較してから選びましょう。
傷病手当金は「任意継続なら受け取れる」とは限らない
任意継続を選んでも、退職後に病気やケガをした場合、新たに傷病手当金を受け取ることは原則できません。傷病手当金を退職後も受け取れるのは、退職する前から病気やケガで会社を休み、すでに傷病手当金の支給要件を満たしていた人に限られます。
- 退職前から病気で休職していた人 → 退職後も一定の条件を満たせば受給できる
- 退職後に初めて病気になった人 → 任意継続でも新たに傷病手当金は受け取れない
「任意継続なら会社員時代と同じ保障が続く」と思われがちですが、傷病手当金については例外なので注意が必要です。
任意継続と国民健康保険の5つの違い
① 加入先が違う
- 任意継続:退職前に加入していた健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)
- 国民健康保険:お住まいの市区町村
② 保険料の決まり方が違う
- 任意継続:退職前の給与(標準報酬月額)を基に計算
- 国民健康保険:前年の所得を基に計算
退職した年は前年の所得が高いため、国民健康保険料が高額になるケースがあります。
③ 扶養制度が違う
- 任意継続:扶養制度あり
- 国民健康保険:扶養制度なし
会社員時代と同じように家族を扶養へ入れられるのは任意継続です。国民健康保険では家族も加入者となり、世帯全体の保険料が計算されます。
④ 加入できる期間が違う
- 任意継続:最長2年間
- 国民健康保険:加入期間の制限なし
任意継続は退職後の一時的な制度です。
⑤ 付加給付がある場合がある
健康保険組合によっては、
- がんなど高額治療時の自己負担軽減
- 人間ドック補助
- 出産・傷病に対する独自給付
などの付加給付があります。
一方、国民健康保険には、このような独自の付加給付は原則ありません。
保険料だけで決めるのは危険
任意継続は保険料だけを見ると高く感じることがあります。しかし、健康保険組合によっては、がんなどで高額な医療費がかかった場合に自己負担を大きく軽減する「付加給付」が利用できるケースがあります。「毎月いくら払うか」だけではなく、「どんな保障を受けられるか」まで比較することが大切です。
【参考サイト】
※本記事について
本記事は、退職後の健康保険について一般的な制度を解説したものであり、個別の保険料や加入方法を保証するものではありません。健康保険料は、加入する健康保険、退職時の標準報酬月額、前年所得、年齢、家族構成、居住する自治体などによって異なります。また、制度や保険料率は変更される場合があります。退職時には、任意継続・国民健康保険・家族の健康保険の被扶養者などの選択肢について、協会けんぽ、加入している健康保険組合、市区町村等の最新情報を確認し、ご自身の条件で保険料を比較してください。
