投資・資産形成

ワンルーム投資は本当に儲かるのか? 利回りと構造の「見えない前提」

ワンルームマンション投資の利回りと収支構造、見えにくいリスクやコストを解説するMoney Compassのアイキャッチ画像
筒井直子|Money Compass 編集長

「家賃収入で安定した収入を得ませんか」「老後の年金代わりになります」「節税にもなります」 ワンルームマンション投資では、こうしたメリットが強調されることがあります。

たしかに、条件の良い物件を適切な価格で購入し、安定して入居者を確保できれば、家賃収入や売却益を得られる可能性があります。不動産投資そのものを否定する必要はありません。ただし、ここで注意したいのは、「家賃が入ること」と「投資として利益が出ること」はまったく別の話だということです。

ワンルーム投資は、物件を買えば終わりではありません。融資、賃貸、管理、修繕、税金、そして最後の売却まで含めて収支を考える必要があります。見るべき数字は「利回り○%」だけではないのです。

家賃収入と利益は別

ワンルーム投資で利益が出るかどうかは、主に次の要素で決まります。

家賃収入 − 保有中の費用 + 売却損益 − 購入・売却時の諸費用

毎月きちんと家賃が入っていても、最終的に買い値より売り値が安ければ、投資全体では損失です。反対に、購入価格が適正で、賃貸需要が強く、費用を抑えながら運用し、納得できる価格で売却できれば利益が残る可能性もあります。

一律に判断するのではなく、一つの小さな賃貸事業として全体の収支を見ることが重要です。

「利回り○%」は利益率ではない

物件広告でよく目にするのが「利回り4%」「利回り5%」といった数字です。たとえば3,000万円の物件で年間家賃が120万円なら、120万円 ÷ 3,000万円=4% となります。

しかし、これは一般に「表面利回り」と呼ばれる数字で、実際の手取り利益をそのまま示すものではありません。所有すれば、管理費、修繕積立金、固定資産税、保険料、賃貸管理費などが発生します。さらに、入居者の退去に伴う空室、原状回復、入居者募集などの費用が発生する可能性もあります。

国税庁も、不動産所得を「総収入金額-必要経費」で計算するとしており、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などを必要経費の例として挙げています。「家賃収入」と「利益」を混同しない。これが最初のチェックポイントです。

家賃収入があっても、キャッシュフローは赤字になり得る

注意したいのがローンです。たとえば家賃が月10万円入っていても、

家賃収入
-ローン返済
-管理費
-修繕積立金
-賃貸管理費
-税金・保険
-空室や修繕への備え

まで考えると、毎月の手残りが小さくなったり、持ち出しになったりする可能性があります。「入居者がローンを払ってくれる」という表現を、そのまま受け取らないことです。

金融機関と金銭消費貸借契約を結び、返済義務を負うのは物件の所有者です。空室になって家賃が入らなくても、原則としてローン返済は続きます。家賃は返済原資の一つであって、返済責任そのものを入居者が負っているわけではありません。

空室が起きても耐えられるか?

「駅から近いので空室リスクは低い」「入居率は○%です」こうしたデータも判断材料にはなります。しかし、過去の入居率が将来の入居を保証するわけではありません。

考えるべきは、空室期間が発生しても資金繰りに耐えられるか、という視点です。家賃収入は入居状況によって変動しますが、ローン返済や管理費、修繕積立金などは空室でも発生します。

収入が減ったケースでも返済を継続できるか。購入前のシミュレーションでは、満室を前提にした数字だけでなく、家賃低下や空室を織り込んだ数字も確認する必要があります。

築年数とともに条件が変わる可能性がある

購入時の収支が、そのまま20年、30年続くとは限りません。建物や設備は経年によって劣化します。専有部分では給湯器、エアコン、水回りなどの交換が必要になることがあります。

マンションの場合はさらに、外壁、屋上、給排水設備、エレベーターなど共用部分の維持管理にも影響を受けます。

区分所有者は自分の一室だけを所有しているように見えて、実際にはマンション全体の管理状態から切り離されているわけではありません長期修繕計画や修繕積立金の水準、滞納状況なども確認したいポイントです。

「節税になる」は高所得者と一般会社員で意味が違う

ワンルームマンション投資の営業で「節税」という言葉がよく使われます。確かに、不動産所得で税務上の赤字が生じ、その赤字を給与所得などと損益通算できれば、所得税や住民税が下がる場合があります。その意味では、一般サラリーマンでも「税金が少し安くなる」ケースはあります。

しかし、ここで忘れてはいけないのが、所得税は累進課税であるという点です。

国税庁の「所得税の税率」によると、所得税率は課税所得に応じて5%から45%まで7段階に分かれています。2026年分では、課税所得900万円以上1,800万円未満の部分には33%、1,800万円以上4,000万円未満の部分には40%の税率が適用されます。

つまり、同じ100万円の不動産所得の赤字を給与所得と損益通算できたとしても、所得税率10%・20%の人と、33%・40%の人とでは、減らせる所得税額が大きく違います。

不動産投資の「節税メリット」が大きくなるのは、一般の会社員より、所得税の限界税率が33%・40%に達するような高所得者です。

たとえば、不動産所得で100万円の赤字が生じ、その結果として20万円の税負担が軽くなったとしても、それだけで100万円の赤字が利益に変わるわけではありません。

「年間いくら節税できるか」だけを見るのではなく、家賃収入、ローン返済、管理費、修繕積立金、固定資産税、空室リスク、将来の売却価格まで含めて、税引き後で最終的に資産が増えるのかを見る必要があります。

将来、いくらで売れるか?

ワンルーム投資で見落とされやすいのが出口です。購入するときには「月々いくら」という数字に目が向きますが、投資全体の成否を考えるなら、将来、この物件を誰が、いくらで買うのかという視点が必要です。

売却価格は、立地、築年数、賃料、市況、金利、管理状態などさまざまな要因に左右されます。購入時には、販売会社から提示された収支表だけでなく、周辺の中古物件の成約価格や賃料水準など、別の情報源でも確認することが重要です。

そもそも、この営業マンは「なぜ、この物件を私に提案しているのか」を考えてみることも大切です。うまい話が向こうからやってくることは通常ありません。疑ってみることも、時には必要です。

営業担当者の説明だけで判断せず、自分で価格の妥当性を検証できるかどうか。ここは大きな分岐点です。

ワンルーム投資は「手軽な投資」ではない

ワンルーム投資で利益を得られるケースはたしかにあります。「買えば家賃が入り、入居者がローンを返してくれる」という単純な仕組みではありません。

確認すべきなのは、表面利回りではなく、費用を含めた実質的な収支、満室時だけでなく、空室・家賃下落時のキャッシュフロー、管理費・修繕積立金や将来の修繕、借入金利や返済条件、税務上の取り扱い、最終的な売却価格と売却費用です。

国民生活センターも、投資用マンションについて「必ず儲かるわけではない」と注意喚起し、物件価格、将来の家賃収入、オーナーとしての負担、ローン返済額などを考慮して判断するよう呼びかけています。

ワンルーム投資は金融商品を一つ買う感覚より、借金を伴う小さな賃貸事業を始めると考えたほうが、その実態を理解しやすいでしょう。

「利回り○%」を見る前に、その数字を構成している前提を一つずつ外してみる。家賃が下がっても、空室になっても、金利や費用が上がっても、それでも自分はこの物件を買うだろうか。そこまで考えて初めて、投資判断のスタートラインに立てるのではないでしょうか。

なぜワンルームマンションを買ってしまうのか?

ここまで見てきたように、多くのリスクがあるにもかかわらず、なぜ多くの人が「自分にもできそう」「老後の資産形成になりそう」と感じるのでしょうか。

その背景には、上手な営業トークだけでなく、人間の意思決定のクセも関係しています。ワンルームマンション投資が魅力的に見える仕組みを、行動経済学の視点から別の記事で詳しく分析していますので、ぜひ、こちらの記事もあわせてお読みください。

【関連記事】「なぜワンルームマンションを買ってしまうのか? 営業トークを行動経済学で分析する」

【参考サイト】


国民生活センター|投資用マンションの販売勧誘

国民生活センター|20歳代に増える投資用マンションの強引な勧誘に注意!

知るぽると(金融広報中央委員会)デート商法による悪質な投資用マンション販売

公益社団法人全日本不動産協会 

※本記事は、不動産投資に関する一般的な情報提供を目的としたもので、特定の物件の購入・売却、融資、税務上の判断を推奨するものではありません。物件の収益性やリスク、融資条件、税務上の取り扱いは、物件・契約内容・個人の状況・法令改正等によって異なります。実際の契約や税務判断については、契約書・重要事項説明書等を確認したうえで、必要に応じて宅地建物取引士、税理士、弁護士、金融機関などの専門家へご相談ください。

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筒井直子|Money Compass 編集長
筒井直子|Money Compass 編集長
出版社勤務30年以上/Money Compass 編集長
慶応義塾大学卒業後、大手出版社で30年以上、編集者として書籍・雑誌に携わってきました。Money Compassでは、家計・投資・教育費・税金・制度など、人生のお金に関わるテーマを、公的機関や一次情報を確認しながら生活者の目線でわかりやすく解説しています。
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