退職で損しないお金の手続き7選。退職は「お金の手続き」の始まり
退職は、会社を辞めて終わりではありません。退職金、健康保険、年金、失業給付、税金――。知らないまま手続きを逃すと、余計なお金を払ったり、受け取れるはずのお金を逃したりすることがあります。退職前後に必ず確認したい「お金の手続き」を7つにまとめました。
必ず確認したい「お金の手続き」7選
① 「退職所得の受給に関する申告書」は提出した?
退職金を受け取る人に、まず確認してほしいのが「退職所得の受給に関する申告書」です。退職金の支払いを受けるまでに、勤務先へ提出します。
この申告書を提出すると、勤務先が勤続年数などに応じた退職所得控除を反映して所得税・復興特別所得税を計算し、必要な税額を源泉徴収します。そのため、退職所得については原則として確定申告をする必要がありません。
一方、申告書を提出しなかった場合は、退職金の支給額に対して20.42%の所得税・復興特別所得税が源泉徴収されます。
例えば退職金が800万円なら、単純計算で約163万円が源泉徴収されます。ただし、これは最終的な税額ではありません。申告書を提出しなかった場合は、確定申告を行うことで本来の税額に精算します。
退職金を受け取る予定があるなら、退職前に「退職所得の受給に関する申告書の手続きは済んでいますか?」と勤務先に確認しておきましょう。
② そもそも退職金はいくらもらえる?
退職金は会社によって大きく異なります。そもそも、すべての会社に退職金制度があるわけではありません。老後資金に退職金を組み込む前に、自分の会社の退職金規程や企業年金制度を確認しておきましょう。
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」では、退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合は74.9%。企業規模別では、1,000人以上90.1%、300~999人88.8%、100~299人84.7%、30~99人70.1%となっています。
同調査では、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者について、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の平均退職給付額は1,896万円でした。ここでいう退職給付額には、退職一時金だけでなく企業年金制度から支給される年金の現価額も含まれます。
一方、東京都が従業員10~299人の都内中小企業を対象に行った「令和6年版 中小企業の賃金・退職金事情」では、大学卒の定年時モデル退職金は1,149万5,000円でした。
| 公的調査 | 退職給付・退職金 |
|---|---|
| 厚生労働省調査 | 1,896万円 |
| 東京都・中小企業調査 | 1,149.5万円 |
※調査対象や算出方法が異なるため、2つの金額を単純に比較することはできません。
「退職所得の受給に関する申告書」は、退職手当等を受け取る人に関係する書類です。なお、企業型確定拠出年金(企業型DC)の老齢給付金を一時金で受け取る場合など、税法上「退職所得」として扱われるものもあります。
③ 有給休暇は使い切れる?
退職日が決まったら、有給休暇の残日数も確認しておきましょう。退職すると、それまで残っていた年次有給休暇を取得することはできなくなります。
「使い切れなかった有給は会社が買い取ってくれる」と思っている人もいますが、会社に買い取りが義務付けられているわけではありません。
年次有給休暇は本来、労働者が休むための制度であるため、取得できる有給休暇をあらかじめ買い取って休ませないようにすることは認められていません。一方、退職によって消滅する有給休暇について会社が任意で金銭を支払うことまで禁止されているわけではありません。
ただし、退職時の未消化分を買い取る法律上の義務があるわけではありません。退職日を決める前に残日数を確認し、有給消化のスケジュールや会社の取り扱いを人事担当者に確認しておきましょう。
④ 退職後の健康保険はどうする?
退職すると、勤務先の健康保険の被保険者資格は原則として退職日の翌日に喪失します。その後の主な選択肢は次の3つです。
- 勤務先の健康保険を任意継続する
- 国民健康保険に加入する
- 条件を満たして家族の健康保険の被扶養者になる
どれが有利かは、退職前の収入、住んでいる自治体、家族構成などによって変わります。特に注意したいのが任意継続です。協会けんぽの場合、原則として退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間があり、退職日の翌日から20日以内に手続きをする必要があります。期限が短いため、退職前に保険料を比較しておくと安心です。
⑤ 年金の手続きは「退職時の年齢」で変わる
ここは、定年退職する人が特に間違えやすいポイントです。
退職すると厚生年金の被保険者資格は原則として退職日の翌日に喪失します。ただし、その後に国民年金への切り替えが必要かどうかは退職時の年齢によって異なります。
20歳以上60歳未満で退職し、すぐに再就職して厚生年金に加入しない場合は、原則として国民年金の第1号被保険者への切り替えが必要です。一定の条件を満たして厚生年金に加入している配偶者に扶養される場合は、第3号被保険者になることもあります。
一方、60歳以上で定年退職した場合は、原則として国民年金への加入義務はありません。ただし、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていない場合や、満額に近づけたい場合など、条件を満たせば国民年金に任意加入できる場合があります。
「退職したら全員が国民年金に切り替える」というわけではないので、自分の年齢と加入状況を日本年金機構や市区町村の窓口で確認しましょう。
⑥ 雇用保険の基本手当は受け取れる?
雇用保険の基本手当、いわゆる「失業給付」は、退職しただけで自動的にもらえるものではありません。
基本手当は、原則として雇用保険の受給資格を満たし、働く意思と能力があり、求職活動をしているにもかかわらず就職できない状態にある人が対象です。
定年退職でも、条件を満たせば対象になります。ただし、定年後しばらく休養してから再就職したい場合など、すぐに働く意思がない期間は基本手当を受けることができません。
なお、60歳以上で定年等により離職し、一定期間求職活動をしない場合には、申請により基本手当の受給期間を延長できる制度があります。原則として離職日の翌日から2か月以内に手続きが必要です。
また、基本手当の受給資格がある人が一定の要件を満たして早期に安定した職業に就いた場合は、再就職手当を受けられることがあります。退職後も働く予定がある人は、早めにハローワークで確認しておきましょう。
⑦ 確定申告が必要・有利になるケースを確認する
退職した年は、確定申告によって税金が戻るケースがあります。
年の途中で退職し、その年に再就職せず年末調整を受けていない
医療費控除や寄附金控除などを受ける
「退職所得の受給に関する申告書」を提出せず、退職金から20.42%の所得税等が源泉徴収された
例えば、年の途中で退職してその年に再就職しなかった場合、給与から源泉徴収された所得税が納め過ぎになっていることがあります。その場合は、確定申告によって還付を受けられる可能性があります。
なお、同じ年に再就職した場合は、原則として新しい勤務先で前の勤務先の給与も含めて年末調整を行います。
+α 会社から受け取る書類も確認しておこう
退職後の手続きには、勤務先から交付される書類が必要になります。退職前後に、必要な書類がそろっているか確認しましょう。
- 給与所得の源泉徴収票
- 雇用保険被保険者離職票(必要な場合)
- 雇用保険被保険者証
- 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票(退職手当等がある場合)
- 健康保険の資格喪失を確認できる書類など、退職後の手続きに必要な書類
特に失業給付を申請する場合は離職票が必要です。届かない場合は勤務先に確認し、それでも交付されない場合はハローワークに相談できます。
退職後に数十万円単位の差が出ることも
退職すると、税金、健康保険、年金、雇用保険など、いくつもの制度が一度に動きます。しかも、退職後の状況や年齢によって必要な手続きは変わります。知らないまま手続きを進めると、選択によっては負担額に数十万円の差が出ることもあります。
- 退職金があるなら「退職所得の受給に関する申告書」を確認する
- 有給休暇の残日数を確認する
- 退職後の健康保険を選ぶ
- 60歳未満なら国民年金の切り替えが必要か確認する
- 再就職するなら雇用保険の基本手当や再就職手当を確認する
- 年末調整を受けない場合などは確定申告を検討する
- 退職後の手続きに必要な書類を受け取る
なかには期限の短い手続きもあります。例えば協会けんぽの任意継続は、原則として退職日の翌日から20日以内です。
退職が決まってから調べ始めるのではなく、退職前に「自分には何の手続きが必要か」を確認しておく。それだけでも、退職後のお金の不安はかなり減らせます。退職手続きで怖いのは、「知らなかった」より「期限を過ぎてしまった」です。退職日が決まったら、必要な手続きと期限を一覧にして確認しておきましょう。
【参考サイト】
- 国税庁|退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)
- 国税庁|退職金を受け取ったとき(退職所得)
- 厚生労働省|令和5年就労条件総合調査
- 東京都産業労働局|中小企業の賃金・退職金事情
- 厚生労働省|年次有給休暇について
→ 年次有給休暇の基本ルール - 全国健康保険協会(協会けんぽ)|退職後の健康保険について
→ 任意継続、国民健康保険、家族の扶養という退職後の選択肢 - 協会けんぽ|任意継続の加入手続きについて
→ 「退職日の翌日から20日以内」など任意継続の手続き - 日本年金機構|国民年金に加入するための手続き
→ 退職後に国民年金第1号被保険者になる場合の手続き - 日本年金機構|国民年金の任意加入制度
→ 60歳以上で国民年金に任意加入する場合 - ハローワークインターネットサービス|基本手当について
- ハローワークインターネットサービス|再就職手当について
- 国税庁|中途退職で年末調整を受けていないとき
- ※本記事について
本記事は、退職時・退職後に必要となる税金、社会保険、雇用保険、年金等の手続きについて、一般的な制度を解説したものです。必要な手続きや期限、受給要件、保険料・税額などは、退職理由、年齢、家族構成、再就職の有無、前年所得、加入していた健康保険などによって異なります。また、制度は法改正等により変更される場合があります。実際に手続きを行う際は、勤務先、ハローワーク、日本年金機構、加入している健康保険、市区町村、税務署等の最新の公式情報をご確認ください。
