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自宅兼オフィスの「家事按分」とは? 住居費を事業コストとして活用する

自宅兼オフィスの家事按分について、家賃・電気代・通信費など経費にできるものとできないものを解説するMoney Compassのアイキャッチ画像
筒井直子|Money Compass 編集長

副業やフリーランスという働き方が広がり、自宅で仕事をする人が増えています。ブログを書く。YouTubeを配信する。オンライン講師をする。コンサルティングを行う。

こうした新しい働き方では、自宅は単なる生活の場ではなく、「オフィス」としての役割も担います。そこで気になるのが、「家賃や電気代は経費になるの?」という疑問です。

結論から言えば、仕事で使っている部分については、必要経費として認められる可能性があります。その考え方が、「家事按分(かじあんぶん)」です。

経費の「家事按分」とは?

家事按分とは、仕事と私生活の両方で使用する支出を、合理的な基準で仕事用と生活用に分けることです。家賃、電気代、インターネット料金、携帯電話料金・・。これらは仕事でもプライベートでも使います。その事業に使った部分だけを経費にするという考え方です。

家事按分できる可能性がある費用

自宅兼オフィスでは、次のような支出が家事按分の対象となることがあります。

費用家事按分の対象になる可能性
家賃(賃貸)
共益費・管理費
電気代
ガス代〇(業務内容による)
水道代△(業種による)
インターネット料金
固定電話・携帯電話〇(業務利用分)
建物の減価償却費(持ち家)
固定資産税(持ち家)
修繕費〇(事業使用部分)
住宅ローン利息〇(事業使用部分)
住宅ローン元本×
土地の取得費×

重要なのは、仕事との関連性を合理的に説明できることです。税務署が確認するのは、「何割か」ではなく「なぜその割合なのか」です。

家賃はどう按分する?

例えば、家賃20万円のマンションに住み、70㎡のうち21㎡を書斎として仕事専用に使用している場合、事業での使用割合は30%です。

この場合、20万円 × 30%= 約6万円を必要経費として計上できる可能性があります。実際の按分方法は、部屋の面積だけでなく、使用状況なども踏まえて合理的に判断します。

最近では、オンライン会議、クラウドサービスの利用、ブログ運営など、自宅の電気やインターネットは仕事に欠かせないインフラになっています。そのため、電気代や通信費についても、仕事で使用している割合に応じて必要経費となる場合があります。

持ち家でも家事按分はできる

「家事按分は賃貸だけ」と思われがちですが、持ち家でも、

  • 建物の減価償却費
  • 固定資産税
  • 修繕費
  • 火災保険料(対象となる場合)
  • 住宅ローンの利息

などについて、事業使用部分を経費にできる可能性があります。

なぜ、お金のプロは「賃貸」を選ぶ?

税理士や会計士など会計や税務の専門家の中には、あえて賃貸を選ぶ人が少なくありません。その理由は「持ち家か賃貸か」という感情論ではなく、キャッシュフローや税務を重視しているからです。

会計・税務の視点だけで考えれば、「住居費を事業コストとして活用できる」という賃貸のメリットは非常に大きく、年齢に関係なく働き続ける人ほど、その合理性を重視する傾向があるのです。

住居費を事業コストとして活用する

サラリーマンにとって住居費は、毎月支払うだけの「生活費」です。しかし、個人事業主として自宅で仕事をするようになると、住居費の一部は「事業を行うために必要なコスト」という位置づけに変わります。

もちろん、払ったお金が戻ってくるわけではありません。しかし、必要経費が増えれば課税所得を抑えられ、結果として所得税や住民税などの負担が軽くなる場合があります。支払う金額が変わらなくても、「働き方」が変わるだけで、その意味まで変わる。これが最大のポイントです。

「役員社宅」と「家事按分」は発想が同じ

住居費を事業コストとして活用するという考え方は、個人事業主だけのものではありません。会社経営者の間では「役員社宅」という制度が広く利用されています。一見すると個人事業主の家事按分とは別の制度のように思えますが、実は根底にある考え方は共通しています。

役員社宅とは

役員社宅とは、会社が住宅を借りたり所有したりして、その住宅を役員に貸し出す仕組みです。役員は国税庁のルールに基づく一定額の家賃(賃貸料相当額)を会社へ支払います。一方、会社は事業運営に必要な費用として住居費の一部を負担します。

この制度を利用すると、役員が個人で家賃を支払うよりも、会社の経費として処理できる部分が増え、税負担を抑えられるからです。もちろん、役員が負担すべき家賃は国税庁が定めるルールに基づいて計算する必要があり、「無料で住める」わけではありません。

東京都内では、月100万円近い高級マンションを役員社宅として利用する経営者もいます。もちろん「豪華な家に安く住める制度」ではありません。税法で定められたルールに従って役員も家賃を負担する必要がありますが、それでも多くの経営者が役員社宅を利用するのは、「住居費を事業コストとして管理する」という考え方があるからです。

お金のプロは「どんぶり勘定」しない

マネーリテラシーの高い人は、お金を切り詰めて節約する人ではありません。何に、何の目的でお金を使ったのかを明確に区別している人です。

たとえば、食事代でも、家族との外食は生活費、取引先との会食は交際費というように、お金の性質を分けて考えます。住居費も同じです。一般的には、家賃や住宅ローンはすべて生活費と考えがちです。しかし、自宅を仕事場として利用しているなら、その一部は事業を支えるためのコストという見方をします。

会社経営者が役員社宅を活用するのも、個人事業主が家事按分を行うのも、この考え方が根底にあります。誤解しないでいただきたいのは、生活費を経費にしてよいという意味ではありません。

お金を目的ごとに分けて考える。どんぶり勘定しない。

この習慣が、無駄な支出を減らすだけでなく、税金や家計、資産形成まで含めた「お金の流れ」を最適化することにつながるのです。家計簿をつけること以上に大切なのは、お金の使い道を正しく分類すること。これこそが会計の基本であり、マネーリテラシーの本質なのです。

【参考】

※本記事について
本記事は、住居費や家事按分、役員社宅に関する一般的な制度を解説したものです。必要経費として認められる範囲や家事按分の割合、役員社宅の取り扱いは、実際の使用状況や契約内容、事業実態などによって異なります。制度を利用する際は、国税庁の最新情報をご確認いただくとともに、必要に応じて税理士などの専門家へご相談ください。
ABOUT ME
筒井直子|Money Compass 編集長
筒井直子|Money Compass 編集長
出版社勤務30年以上/Money Compass 編集長
慶応義塾大学卒業後、大手出版社で30年以上、編集者として書籍・雑誌に携わってきました。Money Compassでは、家計・投資・教育費・税金・制度など、人生のお金に関わるテーマを、公的機関や一次情報を確認しながら生活者の目線でわかりやすく解説しています。
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