投資・資産形成

「eMAXIS」と「eMAXIS Slim」は同じではありません。長期投資で重要な信託報酬とは?

「eMAXIS」と「eMAXIS Slim」の違いを解説するアイキャッチ画像。投資信託の比較イメージと株価チャートを背景に、同じ名前に見えて実は別商品の重要性を表現。
筒井直子|Money Compass 編集長

投資信託を探していると、「eMAXIS」と「eMAXIS Slim」という、よく似た名前の商品を見かけます。「Slimが付いているかどうかだけでは?」「同じ三菱UFJアセットマネジメントの商品なら、中身も同じなのでは?」そう思ってしまうかもしれません。

しかし、eMAXIS と eMAXIS Slim は同じ商品ではありません。

同じ指数への連動を目指し、実質的な運用内容が同じ商品もありますが、信託報酬や設定時期、販売方法などが異なります。さらに注意したいのが、「全世界株式」です。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)と、eMAXIS 全世界株式インデックス(除く日本)は、そもそも連動を目指す指数が異なります。

投資信託は、愛称や「S&P500」「全世界株式」といった言葉だけで判断せず、正式な商品名と目論見書を確認することが大切です。

※本記事の商品情報は2026年9月1日時点。三菱UFJアセットマネジメントが公表する商品情報および最新の投資信託説明書(交付目論見書)をもとに確認しています。

eMAXIS と eMAXIS Slimは「別シリーズ」

まず、シリーズそのものの違いを整理します。

項目eMAXISeMAXIS Slim
シリーズ従来型低コスト重視
信託報酬商品ごとに異なる業界最低水準を目指す
販売方法ネット+一部窓口原則インターネット取引
商品それぞれ別ファンドそれぞれ別ファンド

eMAXIS Slimは2017年2月に誕生したシリーズで、三菱UFJアセットマネジメントは「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」という方針を掲げています。

一方のeMAXISは、インターネット取引だけでなく、一部の金融機関では窓口販売も行われています。つまり、「Slim」は単なる新しいロゴや愛称ではなく、コスト設計や販売方法まで異なる別シリーズなのです。

S&P500なら違いが分かりやすい

比較しやすいのが、次の2本です。

項目eMAXIS S&P500eMAXIS Slim S&P500
対象S&P500S&P500
実質的な運用内容同一同一
信託報酬年0.330%以内年0.08140%以内
購入時手数料なしなし
信託財産留保額なしなし

正式名称はそれぞれ、

eMAXIS S&P500インデックス

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

です。三菱UFJアセットマネジメントも、この2商品について「実質的な運用内容は同一ですが、設定時期や信託報酬率等が異なります」と説明しています。ここが、eMAXISとeMAXIS Slimの違いを理解するうえで最も分かりやすい例でしょう。

信託報酬0.33%と0.08140%の差

信託報酬の違いを金額にすると、どの程度になるのでしょうか。ファンドの基準価額が1年間変わらないと仮定し、目論見書記載の信託報酬の上限率を単純に掛けて比較すると、100万円あたりでは、

eMAXIS S&P500インデックス
約3,300円

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
約814円

となります。差は年間約2,486円です。保有金額が大きくなれば、単純計算上の差も大きくなります。

保有額年間コスト差の目安
100万円約2,486円
500万円約1万2,430円
1,000万円約2万4,860円
5,000万円約12万4,300円

※eMAXIS S&P500インデックスを年0.330%、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)を年0.08140%として単純計算した概算です。実際の信託報酬率には純資産総額に応じた段階的な料率が適用される場合があり、基準価額も日々変動するため、実際の負担額とは異なります。

「0.2%程度なら大した差ではない」と感じるかもしれません。しかし投資信託は、10年、20年と保有することがあります。同じ投資対象・同じような運用内容であれば、継続的に発生するコストを確認する意味は小さくありません。

「全世界株式」はもっと注意が必要

さらに注意したいのが「全世界株式」です。以前のeMAXISシリーズには「eMAXIS 全世界株式インデックス」という商品名がありましたが、2025年4月26日から、

eMAXIS 全世界株式インデックス(除く日本)

へ名称変更されています。現在、Slimのオルカンと並べるとこうなります。

商品日本株
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)含む
eMAXIS 全世界株式インデックス(除く日本)含まない

Slimのオルカンが連動を目指すのは、

MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)

です。一方、eMAXIS 全世界株式インデックス(除く日本)は、

MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(除く日本、配当込み、円換算ベース)への連動を目指します。

つまり、これは単純に、「同じ全世界株式でSlimの方が安い」という比較をしてはいけません。投資対象そのものが違うからです。古いブログ記事やSNS、証券口座の履歴などで旧名称を見た場合には、特に注意したいポイントです。

信託報酬は「総コスト」ではない

もう一つ覚えておきたいのが、信託報酬だけを見れば投資信託のコストをすべて把握できるわけではないことです。

信託報酬は、運用会社、販売会社、受託会社などに支払われる運用・管理費用で、ファンドの純資産から日々計上され、基準価額に反映されます。投資家の銀行口座から、毎月別途引き落とされるわけではありません。このほかにも、有価証券の売買委託手数料、監査費用、海外資産の保管費用などがファンドから支払われる場合があります。

これらは運用状況によって変わるため、事前に総額を確定できません。そのため投資信託を比較するときは、信託報酬だけでなく、運用報告書に掲載される「総経費率」なども確認するという一歩進んだ見方が役立ちます。

商品名の最後まで確認する

投資信託を購入するときは、正式なファンド名、連動対象の指数、投資対象地域、信託報酬、その他の費用、NISA対象の有無などは必ず確認しましょう。そして、運用会社が公表する最新の投資信託説明書(交付目論見書)を見ることです。

「オルカン」「S&P500」「eMAXIS」といった有名な言葉だけで商品を判断すると、似ているけれど別の商品を選んでしまう可能性があります。

長期投資では「0点何%」まで見る

金融庁は資産形成の基本として「長期・積立・分散投資」を紹介しています。長期投資では、価格変動だけでなく、毎年継続して発生するコストも無視できません。「有名なシリーズだから」「S&P500と書いてあるから」「オルカンっぽい名前だから」ではなく、

正式名称を確認する。
目論見書を見る。
投資対象とコストを確認する。

ここまでをセットにしておくと、似た名前の投資信託に迷いにくくなります。

eMAXISとeMAXIS Slimは同じではありません。Slimが付いているかどうか以上に、「何に投資する商品なのか」を確認することの方が重要です。

NISAについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。

【参考サイト】

金融庁「資産形成の基本:長期・積立・分散投資」

三菱UFJアセットマネジメント「eMAXISとeMAXIS Slimの違いは何ですか」

三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slimについて教えてください」

三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)とeMAXIS S&P500インデックスの違いは何ですか」

三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)とeMAXIS 全世界株式インデックス(除く日本)の違いは何ですか」

三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」投資信託説明書(交付目論見書)

三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」投資信託説明書(交付目論見書)

三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS S&P500インデックス」投資信託説明書(交付目論見書)

三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS 全世界株式インデックス(除く日本)」投資信託説明書(交付目論見書)

※本記事は、投資信託の商品構造や費用について一般的な情報を提供することを目的としており、特定の金融商品の購入・売却・保有を推奨するものではありません。投資信託は元本が保証された商品ではなく、価格変動、為替変動、信用、流動性、カントリーリスクなどにより損失が生じ、投資元本を下回る場合があります。信託報酬、NISA対象の有無、運用方針その他の商品内容は変更されることがあります。投資判断にあたっては、運用会社および販売会社が公表する最新の投資信託説明書(交付目論見書)等をご確認ください。

ABOUT ME
筒井直子|Money Compass 編集長
筒井直子|Money Compass 編集長
出版社勤務30年以上/Money Compass 編集長
慶応義塾大学卒業後、大手出版社で30年以上、編集者として書籍・雑誌に携わってきました。Money Compassでは、家計・投資・教育費・税金・制度など、人生のお金に関わるテーマを、公的機関や一次情報を確認しながら生活者の目線でわかりやすく解説しています。
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