知らないと損

見落としがちな「与信」という資産。ローン契約の前に知っておきたい、お金の新しい見方

「見落としがちな『与信』という資産」をテーマにしたアイキャッチ画像。ローン契約書、銀行、クレジットカード、通帳、札束を背景に、信用力も資産であることを表現。
筒井直子|Money Compass 編集長

私たちが持っているのは、預金や株、不動産だけではありません。金融機関などから「この人ならお金を貸しても返してくれる」と判断される信用力も、必要なときに資金を調達するうえで大切な意味を持ちます。

経済産業省によれば、クレジットの与信審査では、収入や債務だけでなく、返済履歴など複数の情報が総合的に考慮されます。

もちろん、与信は預金や不動産のような会計上の「資産」ではありません。本記事では、将来必要になったときに資金を調達できる力を、広い意味での「資産」と捉えて考えます。

そもそも「与信」とは?

与信とは、簡単に言えば、「この人には、どの程度までお金を貸しても大丈夫か」と判断することです。

住宅ローン、自動車ローン、クレジットカードなどでは、金融機関やカード会社がそれぞれの基準で審査します。その際には、年収や借入状況、返済履歴などが確認されます。つまり、信用力は「年収が高いか」だけで決まるものではありません。これまで借りたお金をどう返してきたかも、重要な要素になります。

たとえば、年収800万円・金融資産1,000万円・借金ゼロの人と、年収800万円・金融資産1,000万円・住宅ローン6,000万円+自動車ローン500万円の人。

金融資産だけを見れば同じですが、負債まで含めれば家計の姿はまったく違います。

ローンを組むと「将来の借入余力」に影響することがある

住宅ローンは住まいを購入するための合理的な手段です。ただし、大きなローンを抱えれば、毎月の返済負担は増えます。その後、自動車ローンや別の融資を申し込んだとき、既存の借入や返済負担が審査材料になることもあります。

つまり、「今、借りられるか」だけでなく、「この借入が将来の資金調達にどう影響するか」まで考えておく必要があります。

与信は、預金のように「残高○万円」と見えるものではありません。また、すべての金融機関で共通の「与信枠」があるわけでもありません。大きな借入を増やせば、将来の審査に影響する可能性がある。この意味で、借入余力には限りがあると考えると分かりやすいでしょう。

「借りられる額」と「借りるべき額」は違う

ローン審査に通ると、「銀行が貸してくれるのだから大丈夫」と思ってしまいがちです。しかし、審査に通ることと、その借入額が自分の人生にとって最適であることは別です。たとえば、「住宅購入」「自動車購入」「子どもの教育費」「独立・起業」「介護」「転職や休職」など、将来まとまった資金が必要になる場面はあります。

選択肢を残しておくためには、現在の借入を必要以上に増やさないことも大切です。ローンを組むときは、「いくらまで借りられるか」ではなく、「いくらまでなら将来の選択肢を残せるか」という視点を持つことも必要なのです。

起業を考えている人なら、なおさら意識したい

将来、独立や起業を考えている人にとって、借入余力は重要です。事業を始めるには、設備資金や運転資金などが必要になることがあります。

ただし、事業融資は住宅ローンのような個人向けローンとは審査の仕組みが異なります。事業計画、収益性、自己資金、経営者の状況などを含めて総合的に判断されます。

「住宅ローンがあると事業融資を受けられない」と単純に考えるのは正しくありません。一方で、個人の既存債務や返済負担が資金調達の判断材料になる場合はあります。

「将来どこでお金を借りる可能性があるか」を考えて、現在の借入を決めることには意味があります。

信用は「借りるためだけ」のものではない

与信というと、「たくさん借りられる人ほど信用が高い」と思うかもしれません。しかし、本当に大切なのは、限度いっぱいまで借りることではありません。

むしろ、必要なときに、必要な金額を、無理のない条件で借りられる状態を保つことの方が重要です。信用は、使い切るためのものではなく、将来の選択肢を残すためのもの。そう考えると、住宅ローンも自動車ローンも見え方が変わります。

「低金利だから借りる」「審査に通ったから借りる」だけではなく、「この借入によって、自分の将来の自由はどれくらい減るのか」まで考える。それが、ローンと上手に付き合うための一つの視点です。

※本記事では「与信」を会計上の資産ではなく、将来の資金調達能力という意味で比喩的に「資産」と表現しています。実際の融資審査基準は金融機関や商品によって異なり、借入の可否や条件を保証するものではありません。

【参考サイト】

経済産業省「割賦販売法(後払分野)の概要・FAQ」

金融庁「個人信用情報の保護のための措置」

J-FLEC「ローン」(金融経済教育推進機構)

※関連記事 残価設定型クレジット(残クレ)については、こちらの記事もご覧ください。

※本記事について
本記事は、ローンやクレジットにおける「与信」について、一般的な金融・消費者教育の観点から解説したものです。本記事では、将来必要になったときに資金を調達できる信用力・借入余力を、分かりやすく「資産」と表現していますが、与信は預金や有価証券、不動産などのような会計上の資産ではありません。また、ローンを利用すると一定額の「与信」が機械的に減少するわけではなく、新たな融資の可否や借入可能額は、収入、既存の借入・返済状況、信用情報、資産状況、融資目的などをもとに、各金融機関が個別に審査します。ローンを検討する際は、金利や毎月の返済額だけでなく、現在の借入残高や返済負担、将来必要となる資金なども含め、無理のない範囲で判断してください。

ABOUT ME
筒井直子|Money Compass 編集長
筒井直子|Money Compass 編集長
出版社勤務30年以上/Money Compass 編集長
慶応義塾大学卒業後、大手出版社で30年以上、編集者として書籍・雑誌に携わってきました。Money Compassでは、家計・投資・教育費・税金・制度など、人生のお金に関わるテーマを、公的機関や一次情報を確認しながら生活者の目線でわかりやすく解説しています。
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