知らないと損

宝くじは愚者の税金か? 期待値から考えるお金の使い方

宝くじの夢と現実を表現したアイキャッチ画像
筒井直子|Money Compass 編集長

宝くじは、しばしば「愚者の税金」と揶揄されます。もちろん、本当の税金ではありません。しかし、宝くじの仕組みを数字で見ると、なぜこんな辛辣な言葉が生まれたのかは分かります。

実は日本の宝くじは、法律によって当せん金の総額に上限が設けられています。当せん金付証票法第5条では、原則として当せん金品の総額は発売総額の50%を超えてはならないと定められています。

つまり、購入者全体で考えれば、100円買って、当せん金として戻せるのは原則最大50円。大当たりして億単位のお金を手にする人がいる一方、その原資は大勢の「外れた人」が購入したお金です。宝くじを資産形成の手段として考えてはいけない理由は、ここにあります。

【参考】e-Gov法令検索「当せん金付証票法」

実際の当せん金は46.5%

法律上の上限は原則50%ですが、実際にはどのくらいが購入者に戻っているのでしょうか。宝くじ公式サイトによると、令和6年度の宝くじ販売実績額は7,598億円でした。その使い道は次のようになっています。

使い道金額割合
当せん金3,529億円46.5%
自治体の収益金2,750億円36.2%
印刷経費・販売手数料など1,218億円16.0%
社会貢献広報費101億円1.3%

つまり、購入者が支払ったお金のうち、当せん金として購入者側に戻ったのは46.5%です。これは100万円分の宝くじを買えば53万5,000円が必ず失われる、という意味ではありません。

100万円が数億円になる人もいれば、ほぼすべてを失う人もいます。購入者全体を一つの集団として見れば、100万円の購入額に対して、当せん金として還元される金額は平均46万5,000円相当だったということです。

残りの53万5,000円相当は、自治体の収益金や宝くじの運営経費などに回ります。これが宝くじの「還元率50%未満」の正体です。

【参考】宝くじ公式サイト「収益金の使い道」

競馬よりも低い「還元率」

ほかの公営競技と比べるとどうでしょう。中央競馬(JRA)の設定払戻率は、投票方法によって異なります。

種類払戻率・当せん金割合
宝くじ(令和6年度実績)46.5%
JRA・WIN570.0%
JRA・3連単72.5%
JRA・馬単・3連複75.0%
JRA・馬連・枠連・ワイド77.5%
JRA・単勝・複勝80.0%

JRAの場合、通常の設定払戻率は70~80%です。たとえば単勝なら80%。一方、令和6年度の宝くじの当せん金割合は46.5%でした。

単純比較はできませんが、購入金額に対して購入者側へ戻る金額の割合という点では、宝くじはかなり低い水準です。

【参考】JRA「馬券のルール」

それでも「宝くじ=損」と言い切れない

ここまで数字だけを見ると、「それなら宝くじなんて買わない方がいい」という結論になりそうです。しかし、それは宝くじという商品の半分しか見ていません。なぜなら、宝くじを買う人は「もし当たったら」と夢みる時間を買っているとも考えられるからです。

300円で「夢を見る時間」を買う

宝くじを1枚買って抽せん日まで、「1億円当たったら会社を辞めよう」「住宅ローンを全部返そう」「世界一周しよう」「家族に1000万円ずつ渡そう」などと想像する。もちろん、ほとんどの場合、その未来は実現しません。そう考えると、宝くじのは娯楽費と考えることもできます。娯楽費と割り切っているなら、還元率46.5%だけを見て「合理的ではない」と切り捨てる必要もありません。

宝くじには「地方財政」というもう一つの顔がある

宝くじには一般的なギャンブルとは少し違う側面があります。宝くじの発売主体は民間企業ではありません。発売できるのは、法律に基づいて総務大臣の許可を受けた全国の都道府県と指定都市です。

令和6年度には、7,598億円の販売実績のうち2,750億円、36.2%が発売元自治体の収益金となりました。このお金は、高齢化・少子化対策、防災対策、公園整備、教育施設、社会福祉施設の建設・改修など、地域のさまざまな事業に使われています。

一部は運営経費などに使われ、かなりの部分が地方自治体の財源になります。

「寄付」と考えるのも少し違う

「宝くじは自治体への寄付だと思えばいい」。そう言う人もいます。しかし、宝くじを購入したお金は寄附金ではありません。購入者は当せんする可能性のある「宝くじ」を買っているのであり、その売上金の一部が制度上、地方自治体の収益になる仕組みです。「結果として地方財政にも貢献している娯楽」くらいに考えるのが適切でしょう。

結局、宝くじは「愚者の税金」なのでしょうか。お金を増やすために買うなら、極めて効率が悪い。もし「宝くじを買い続ければ、いつか人生を逆転できる」と考えて、なけなしのお小遣いや貯金で宝くじを買っている人がいたらやめてください。

夢を買うなら娯楽費。お金を増やすなら資産形成。この二つを混同しない。それが、宝くじとの一番賢い付き合い方なのかもしれません。

【参考サイト】

総務省「宝くじ」関連情報
宝くじは地方自治体が発売し、その収益金が地方財政に活用される仕組みです。「なぜ購入額のすべてが当せん金として戻ってこないのか」が説明されています。

※本記事について
本記事は、宝くじの仕組みや当せん金の還元率について、一般的な金融・消費者教育の観点から解説したものです。「愚者の税金」は宝くじの期待値の低さを表す比喩的な表現であり、宝くじは法律上の「税金」ではありません。また、「還元率」とは販売総額に対して当せん金として購入者全体に還元される割合を示すもので、個々の購入者がその割合の金額を受け取れるという意味ではありません。宝くじには地方財政を支える役割もあり、その収益金は公共事業等に活用されています。本記事は宝くじの購入そのものを否定するものではなく、資産形成の手段ではなく、仕組みと確率を理解したうえで娯楽として楽しむことが大切だという趣旨で解説しています。

ABOUT ME
筒井直子|Money Compass 編集長
筒井直子|Money Compass 編集長
出版社勤務30年以上/Money Compass 編集長
慶應義塾大学卒業後、大手出版社で30年以上、編集者として書籍・雑誌に携わってきました。Money Compassでは、家計・投資・教育費・税金・制度など、人生のお金に関わるテーマを、公的機関や一次情報を確認しながら生活者の目線でわかりやすく解説しています。
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