「ポイ活」は得なのか?ポイント還元が「思考停止」を生む
どのお店でもポイントはしっかり貯めて、割引を受けられるようにしているのに、なぜかお金は残らない。むしろ、買い物のたび「ポイントカードはお持ちですか?」のやりとりで、時間を失っている気がする。毎回数秒とはいえ、塵も積もれば…ですよね。結構これ、私の経験です。その違和感、正しいです。ポイ活は「お得な節約術」ではありません。多くの場合、貴重な時間と判断力を削って、わずかな見返りを得る非効率な行動です。しかも厄介なのは“得している感覚”だけはしっかり残ることです。この記事では、そもそもポイントは誰のためにあるのか? 各社がしのぎを削る「ポイント経済圏」についてもを考えます。
そのポイント集め、誰のため?
まず、この記事でのポイ活とは何かを先に定義します。語弊を恐れずに言えば、それは「本来必要のない行動を増やして、わずかなポイントを回収しようとする非効率な活動」です。
ポイントのために
・不要なサービスに登録する
・いらない買い物をする
・複数サイトに登録する
また、ポイ活は別の意味でも使われます。それは、アンケート回答やアプリ登録などで、隙間時間に少額のポイントや報酬を得る“疑似的な軽作業”のこと。低単価の案件では「数円〜数十円」のために貴重な時間を使っているケースも多く、効率は極めて低いのが現実です。
マイルやETCも同じ構造ですが、これも誤解が多いかもしれません。「マイルをためれば無料で旅行できる」というイメージがありますが、実際の条件はかなり厳しいことも。
・飛行機に仕事の出張などで頻繁に乗る
・支払いを集中管理できる
・自分のペースで時間が使え、期限内に交換できる
こういう人だけが得をします。一方で、なんとなく貯めている人は
・失効する
・使い道がない
・交換効率が悪い
結果として、現金還元より損になります。ETCマイレージも同じです。頻繁に使う人には有利ですが、使わない人にはほぼ意味がありません。つまり、これらはすべて「お金や時間にゆとりのある一部の人が得をする仕組み」です。
ポイ活は「脳のエネルギーの無駄遣い」
ここが一番重要です。ポイ活が問題なのは「金額」ではなく、思考と時間の使い方を歪めることです。
・数百円を得るために、手間を増やして貴重な時間を使う
・数百円を得るために、管理コストを増やす
・数百円を得るために、個人情報を差し出す
これを冷静に考えると、かなり歪(いびつ)な行動です。人は朝起きてから夜寝るまで、1日に平均3万5000回の決断・選択をしているといわれます。何を食べ、何を着るかなど小さい判断から仕事上の大きな判断。膨大な回数の決断は脳に負担をかけ、決断疲れを引き起こします。ポイ活も脳のリソースを使う決断・選択の一つであることは言うまでもありません。
有名な話ですが、スティーブ・ジョブズは、重要な意思決定に脳のエネルギーを集中させるため、彼にとってはどうでもいい洋服選びは放棄して、毎日同じ服(黒いタートルネックとジーンズ)を着ていたと言います。これは極端な例ですが、たくさんある選択肢の中から何か一つを選ぶ行為はそれだけ、脳のリソースを割く行為なのです。
よくわからないサイトに登録すると、パスワード管理の手間も増えます。個人情報漏洩のリスクも高まります。それでも続けてしまう理由はなにか。「得している気分になるから」です。「会員登録したら会計からこの場で○○円分割引しますよ」と言われて、ついつい登録してしまった人も多いでしょう。
でも、節約のために本当にやるべきこと。ここまで読んでいただければ、その結論はシンプルです。ポイ活で数百円を積み上げるより、
・固定費などの支出を減らす
・収入を上げる努力をする
・時間の使い方を最適化する
この方が、圧倒的に効果があります。ポイ活は、やればやるほど賢くなる仕組みではありません。むしろ、多くの場合、非効率で非生産的です。「やらない」という選択も、立派な合理的判断です。
「ポイント経済圏」という見えない囲い込み
ここまでくると見えてきませんか? 最も得をしているのは、制度を設計している側です。
・顧客の囲い込み
・購買頻度の増加
・価格への抵抗感の低下
これが同時に成立します。単なるメリットではなく、売上と利益に直結する仕組みです。たとえば、ポイントがあることで「またここで買おう」という動機が生まれます。本来なら価格や品質で比較されるはずの場面でも、比較そのものが起きにくくなります。
さらに、「ポイントが付くから」という理由で来店頻度も上がります。結果として、客単価も購入回数も自然に引き上がります。そして決定的なのが、価格に鈍感になることです。人は現金には厳しく、ポイントには甘くなります。そのため、多少高くても「実質◯%還元」という表示があるだけで、支払いへの抵抗が下がるのです。
つまり企業側から見れば、
・顧客を逃がさない
・来店回数を増やす
・値引きせずに売れる
という、非常に効率のいい仕組みです。だからこそ、どの企業もやめられない。むしろ、やらなければ負ける構造になっています。一社だけポイントをやめれば、「ポイントがない店」として選ばれなくなる。結果として、すべての企業が導入せざるを得なくなる。
ポイント経済圏という言葉があります。楽天、PayPay、dポイント、Vポイント、au/Ponta の5大勢力が有名です。流通、通信、金融、ECサイト、街中のリアル店舗を同一のポイントで繋ぎ、顧客を囲い込むビジネスモデルです。これは、他者への「ロックイン効果(囲い込み効果)」を狙ったもので、集めた個人データをAIで分析しています。
もはやポイントは顧客サービスではなく、企業にとっては売り上げ最大化のための必須装備です。そしてそのコストは、最終的に商品価格という形で消費者が負担しています。つまり、ポイント制度とは、企業同士の競争の中で強化され続け、その負担を利用者全体で支える構造です。
この前提に立つと、「誰が本当に得をしているのか」は明確になりますね。
