教育とお金

ホームステイガチャはなぜ起きる? 海外では「国際交流」であり「空き部屋ビジネス」でもある

ホームステイガチャはなぜ起きる? 海外ホームステイの国際交流と空き部屋ビジネスの側面を解説
筒井直子|Money Compass 編集長

「ホームステイガチャ」という言葉があります。留学先のホストファミリーによって、食事や生活環境、家族との交流に大きな差があることを、いわゆる「ガチャ」にたとえた表現です。

わが家も、長男が高校生のとき、カナダへの1年間の留学でホームステイ先に苦労した経験があります。最初の家庭は食事付きの条件でした。ところが、ホストマザーは夜勤のある仕事をしていたため、朝は休んでいて、夜は仕事で不在という日もありました。仕事の事情なので仕方ありませんが、困ったのは食事が用意されていないことが少なくなかったことです。

その家庭では「冷蔵庫を勝手に開けてはいけない」というルールがありました。食事付きのはずなのに食べるものがない。自分で冷蔵庫から出して食べることもできない。高校生だった長男は、毎日の食事にかなり困ったといいます。その家庭では、ほかにも留学生を受け入れていました。

長男は当時、「留学生の受け入れが、住宅費など家計を支える収入になっているのではないか」と感じたそうです。もちろん、本当の受け入れ目的や、お金の使い道を確認したわけではありません。あくまで本人が当時抱いた印象です。

幸い、事情を知った現地のクラスメイトの母親が心配し、別のホームステイ先を探すのを手伝ってくれました。友人たちにも支えられ、その後は環境が変わり、最終的には楽しい留学生活を送ることができました。私はこの経験から一つの疑問を持ちました。

海外のホームステイは、そもそもどのような仕組みで成り立っているのでしょうか。

調べてみると、日本で抱きがちな「善意の国際交流」というイメージだけでは見えてこない、もう一つの側面がありました。

海外のホームステイには「ビジネス」の側面がある

ホームステイは、必ずしも無償のボランティアではありません。たとえば、オーストラリアのAustralian Homestay Network(AHN)が公表している2026年のシドニーのホスト向け支払額を見てみましょう。

18歳以上の留学生を個室で受け入れる場合、1週間あたりのホストへの支払額は次のようになっています。

  • 食事なし:290豪ドル
  • 夕食のみ:330豪ドル
  • 平日2食・週末3食:360豪ドル
  • 毎日3食:395豪ドル

この金額には、洗濯設備、水道・電気などの光熱費、インターネットの利用も含まれています。つまり、ホストは「外国人学生を善意で泊める」だけではありません。部屋や食事、生活インフラなどを提供し、その費用を補うための対価を受け取っています。

AHN自身もこれを「reimbursement(費用の補填)」と位置づけ、学生が購入した食事プランに従って食事を提供するよう定めています。

3食付きにすると、ホストが受け取る金額はいくら増える?

ここで数字をもう少し詳しく見てみます。

食事なしは週290豪ドル。毎日3食付きなら週395豪ドル。差額は105豪ドルです。3食×7日=21食なので、単純に割ると、105豪ドル÷21食=1食あたり5豪ドル です。

家族の食事と一緒に作れば食材をまとめて購入できますし、逆に特別な食事への対応が必要になる場合もあります。単純計算はできませんが、ホスト側から考えると、21食分の食材を用意し、買い物をして、調理や片付けをする。それに加えて、水道、電気、洗濯、インターネットなどの利用も増えます。受け入れ期間が長くなれば、コストや手間も積み重なります。つまり、「留学生に快適に暮らしてほしい」という気持ちと、「受け入れコストを一定範囲に収めたい」という家計上の事情が同居するのです。

だからと言って、食事を十分に提供しなかい理由にはなりませんが、ホームステイには善意だけでは説明できない経済的なインセンティブが存在するのは事実のようです。

「ホームステイガチャ」をホストの人格だけで考えない

留学生にとってホームステイは一生に何度もない体験です。「現地の家族の一員として生活できる」と期待しているかもしれません。一方、留学生を定期的に受け入れているホスト側は「空いている部屋を提供し、契約で決められたサービスを提供する」と考えているかもしれません。

ここに大きなズレがあります。

もちろん、留学生との交流そのものを楽しみ、本当の家族のように接してくれるホストもいます。問題は、留学生側が「家族の一員」を期待し、ホスト側が「有償の滞在サービス」と考えているのに、お互いがその違いを理解していない場合です。「ホームステイガチャ」の一部は、こうした期待値のズレから生まれているのかもしれません。

イギリスには「空き部屋収入」の税制まである

海外で自宅の一室を収入につなげる考え方は、ホームステイに限りません。イギリスには「Rent a Room Scheme」という制度があります。

英国政府によると、自分が暮らす住宅の家具付きの部屋を貸し、一定の条件を満たした場合、年間7,500ポンドまでの総収入について所得税が免除される仕組みです。

しかも対象となる総収入には、家賃だけでなく、食事、清掃、洗濯などのサービスに対して受け取った金額も含まれます。一定の条件を満たせば、持ち家だけでなく賃貸住宅に住む人も対象になり得ます。ただし、賃貸契約や住宅ローン、保険などの条件は別途確認が必要です。

ここから分かるのは、少なくとも英国では、「自宅の余っている部屋から収入を得る」という行為が、税制上も想定されているということです。

子どもが独立した後の「空き部屋」は遊休資産でもある

日本でも、子どもが独立した後、そのまま子ども部屋が残っている家庭は珍しくありません。その部屋から生まれる収入は通常0円です。ところが、海外では空き部屋を学生などに提供し、収入や費用補填につなげる仕組みがあります。金融の視点から見ると、これは「遊休資産の活用」と考えることもできます。

新たに投資用マンションを購入するわけではありません。すでに持っている住宅の一部を使う。不動産価格の値上がりを狙うのでもなく、空いているスペースの稼働率を上げる発想です。ただし、ホームステイは単なる「部屋貸し」ではありません。食事を提供する契約なら食事を用意する必要があります。留学生、とくに未成年者を受け入れる場合には、生活上のサポートや安全への配慮も欠かせません。

それでも、住宅を「住む場所」としてだけでなく、「使っていない部分をどう活用するか」という視点で見るのは興味深いところです。

ホームステイは国際交流と経済活動の間にある

では、留学する側はどうすればいいのでしょうか。

わが家の経験からも、契約書や案内に「食事付き」と書いてあるだけで安心しないことをおすすめします。事前に確認したいのは、たとえば次のような点です。

  • 1日何食が提供されるのか
  • ホストが不在のとき、食事はどうなるのか
  • 冷蔵庫やキッチンを自由に使えるのか
  • シャワーの時間や回数にルールがあるか
  • 洗濯は週何回できるのか
  • Wi-Fiや光熱費は料金に含まれるか
  • 門限はあるか
  • どの程度の家事を求められるのか
  • 同じ家に何人の留学生が滞在するのか
  • トラブル時に滞在先を変更できるのか
  • 困ったときの相談窓口はどこか

特に未成年の留学では、本人がホストに強く言えないこともあります。そのため、問題が起きたときに学校や留学事業者へ相談できる仕組みがあるかどうかは重要です。

実際、AHNではホストの選定・研修、家庭訪問、適切な身元確認、滞在中のサポートなどを行うと説明しています。ホームステイ先そのものだけでなく、誰がその家庭を審査し、トラブル時に誰が介入するのかまで確認しておくと安心です。

「海外のホームステイは危険」「ホストは留学生で稼いでいる」と言いたいわけではありません。ホームステイを日本人の感覚で「善意の国際交流」とだけ考えないことが大切なのだと思います。

ホテルほど割り切った商取引ではない。しかし、無償の国際交流でもない。家庭という非常にプライベートな空間に「契約」と「お金」が入ってくるサービスです。留学費用を出すとき、「いくら払うか」だけではなく、そのお金で何を買っているのかまで確認する。ホームステイガチャを完全になくすことはできなくても、その仕組みを知ることで、親子の心構えも違ってくるのではないでしょうか。我が家のちょっと苦い体験から今回の記事を書きました。この記事が誰かの参考になれば幸いです。

【注意】

本記事は、筆者家族の留学経験と、2026年8月時点で確認できる公表資料をもとに、ホームステイの経済的な仕組みを一般的に解説したものです。特定の国、職業、家族構成、ホストファミリーなどを評価・批判する目的ではありません。

ホームステイの料金、ホストへの支払額、食事・光熱費などの提供条件、税務上の取り扱い、ホストの審査基準は、国・地域・教育機関・留学事業者・契約によって異なります。掲載した金額は一例であり、将来の料金や収益を保証するものではありません。

留学やホームステイを検討する際は、学校・留学事業者との契約内容、現地の法令、公的機関およびサービス提供者の最新情報をご確認ください。税務・法律上の判断が必要な場合は、現地の税務当局や専門家にご確認ください。

ABOUT ME
筒井直子|Money Compass 編集長
筒井直子|Money Compass 編集長
出版社勤務30年以上/Money Compass 編集長
慶応義塾大学卒業後、大手出版社で30年以上、編集者として書籍・雑誌に携わってきました。Money Compassでは、家計・投資・教育費・税金・制度など、人生のお金に関わるテーマを、公的機関や一次情報を確認しながら生活者の目線でわかりやすく解説しています。
記事URLをコピーしました