教育とお金

大学の偏差値と「奨学金を借りる割合」を並べてわかった、残酷な現実

大学の偏差値と奨学金を借りる学生の割合を比較したMoney Compass記事のアイキャッチ画像
筒井直子|Money Compass 編集長

大学進学は、いまや一部の人だけの選択ではありません。文部科学省の「令和7年度学校基本調査」によると、2025年度の大学(学部)進学率は58.6%(短期大学を除く)。同世代のおよそ6割が大学へ進む時代です。では、その大学生たちは、学費をどう払っているのでしょうか。

親が負担する人もいれば、返済不要の給付型奨学金を利用する人もいます。そして、日本学生支援機構(JASSO)の第一種・第二種奨学金など、卒業後に返す「貸与型」を利用する学生もいます。

この記事では、大学間の違いを比較しやすくするため、首都圏の主な大学に対象を絞り、入試難易度とJASSOの貸与型奨学金の利用状況を見ていきます。一見すると別々の話に見えますが、河合塾Kei-Netの入試難易度とJASSOの学校別データを照らし合わせると、大学によって貸与型奨学金の利用状況にかなり大きな差があることがわかります。

偏差値表だけを見ていては見えない、もう一つの大学格差です。

この記事では、最新の公表資料と過去の同一時点データを使って、大学の入試難易度とJASSO貸与型奨学金の利用状況を見ていきます。

難関大の学生ほど「奨学金を借りていない」

まずは基本から。JASSOの第一種奨学金は無利子、第二種奨学金は有利子です。どちらも貸与型で、原則として卒業後に返還します。日本の奨学金は、返済不要の「給付」より、卒業後に返す「貸与」が中心です。※詳しくは「奨学金の8割強が貸与型という現実 借金を背負って社会に出る若者たち」で整理していますので合わせてお読みください。

今回、入試難易度の参考にしたのは、河合塾Kei-Netの「入試難易予想ランキング表」です。河合塾のボーダーラインは、合否の可能性が50%の水準です。2026年6月15日更新のランキングでは、前年度の入試結果や全統模試の志望動向などをもとに難易度が予想されています。

大学には学部、学科、入試方式が複数あるため、「慶應義塾大学の偏差値は67.5」といったように、大学全体を一つの数字で表すことはできません。河合塾も、ボーダーラインはあくまで入試難易度を示すもので、大学の教育内容や社会的位置づけを示すものではないとしています。

この記事では、大学全体に一つの偏差値を割り当てることはせず、河合塾Kei-Netの入試難易度を大学群の位置づけの参考にしています。

JASSOの学校別データ

奨学金については、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の「学校毎の貸与及び返還に関する情報」を参照しました。このページは2026年7月3日に更新され、現在は2024年度末時点の学校別情報が公開されています。

JASSOの第一種奨学金は無利子、第二種奨学金は有利子です。どちらも貸与型で、原則として卒業後に返還します。一方、給付奨学金は返還不要です。この記事では、給付型とは分けて扱います。

大学が公表している例を見ると、難関大学では貸与型奨学金の利用割合が比較的低いことがわかります。

入試難易度が下がるにつれ、貸与型奨学金の利用割合が高くなる

東大、早慶で1割前後

慶應義塾大学は2026年度の案内で、JASSOの第一種・第二種奨学金について、「塾生の約12名に1名が利用」と説明しています。単純計算では約8%です。

早稲田大学も、2026年3月現在、学部生約4,000人がJASSOの貸与奨学金を利用していると公表しています。学部学生は約4万5,000人規模なので、こちらも1割前後です。

ただし、大学ごとに制度が異なりますから、この数字は、規模感を知るための参考値です。たとえば、慶應は大学独自の経済支援が厚く、大学独自の返済不要の給付型奨学金があります。したがって「JASSO貸与率が低い=経済的支援を必要とする学生がほとんどいない」という解釈は誤りです。

MARCHで1割台後半、日東駒専で2~3割

大学間の違いを見るには、同じ時点のデータを比べる必要があります。2023年7月公表のJASSO学校別情報をもとに、貸与者数を在籍学生数で割った過去の比較では、次のような差がありました。

慶應義塾 6.5%
東京   8.2%
一橋   8.4%
ICU    8.5%
上智   11.1%
早稲田  12.6%

立教   16.1%
中央   17.1%
青山学院 17.2%
法政   17.6%
明治   18.0%

日本   23.8%
駒澤   27.1%
東洋   27.6%
専修   31.8%

亜細亜  31.4%
東海   31.8%
帝京   32.4%
大東文化 37.0%
国士舘  38.5%

同じ学校別データで比べると、難関大学では1割前後、MARCHでは1割台後半、日東駒専では2割台後半から3割台、さらにその下の難易度帯では3割台後半まで上がる大学があります。一概に言えませんが、入試難易度が下がるにつれて、貸与型奨学金を利用する学生の割合が高くなり、中には2人に1人が利用している大学もあります。(※2023年7月公表時点のデータより)

奨学金利用率を左右するのは、家庭所得だけではない

この差には、いくつもの要因が考えられます。

まず、学費です。国公立大学と私立大学では授業料が違います。私立大学の中でも、文系と理工系、医療系では負担が大きく異なります。次に、住居費です。実家から通える学生と、一人暮らしをする学生では、4年間にかかる総額が大きく変わります。大学独自の給付型奨学金や授業料減免制度の違いもあります。

家庭が大学費用をどこまで負担できるかも大きな要素です。親が授業料や生活費を負担できれば、本人が貸与型奨学金を利用する必要は小さくなります。反対に、学費の一部を本人がまかなう必要があれば、貸与型奨学金の利用は増えます。

つまり、貸与率には、学費、地域、通学形態、専攻、大学独自の支援制度、家庭の経済状況などが重なって表れています。

学生生活調査から家庭の経済状況は追えない

JASSOは2026年3月31日、「令和6年度学生生活調査」を公表しました。大学生の学費、生活費、収入、アルバイト、奨学金などを全国規模で調べた最新資料です。

しかし、2024年度調査からは回答方法の変更により、「家庭の年間平均収入額」が掲載されなくなりました。また、この調査でいう「奨学金受給者」には、JASSOの貸与型だけでなく、JASSOの給付型、さらにJASSO以外の奨学金も含まれます。

そのため、「学生生活調査の奨学金利用率」と「学校別のJASSO貸与率」は同じ数字ではありません。記事の中でこの二つを混ぜると、実態を誤って伝えることになるので、その点は注意したいと思います。

2025年度からは授業料減免も拡充

奨学金制度を取り巻く環境も変わっています。2025年度から、高等教育の修学支援新制度が拡充され、多子世帯の学生については、一定の要件のもとで所得制限なく、大学などの授業料・入学金が国の定める上限まで減免されるようになりました。

こうした制度変更が広がれば、今後は貸与型奨学金の利用率そのものが変わる可能性があります。

22歳で「数百万円の借金」を背負って社会に出る若者がいる

これほど違う大学別の貸与率を見ていると、気になることがあります。

卒業するとき、どれだけの返還義務を抱えているかです。

第一種奨学金は無利子ですが、第二種奨学金は有利子です。たとえば、JASSOの返還例では、月10万円を4年間、合計480万円借りた場合、年3.0%なら返還総額は約646万円。元金480万円に対して、利子は約166万円になります。

年利480万円借りた場合の返還総額
1.0%約532万円
2.0%約587万円
3.0%約646万円
※実際の利率は貸与終了時期や利率の算定方式によって異なります。

ここまで見てきたように、大学によって貸与型奨学金の利用割合には大きな差があります。実際、東京大学の「2023年度学生生活実態調査」でも、「全体としては豊かな家庭出身の学生が多いことがデータから明らかになった」と分析されています。大学受験の結果だけを見ていると見えませんが、その背景には、家庭の経済状況の違いもあります。

親に大学費用を負担してもらい、貸与型奨学金を利用せずに卒業し、比較的高い初任給の企業に就職する学生がいる一方で、数百万円の返還義務を抱えて社会人になる学生もいます。同じ「大卒」、同じ社会人1年目でも、経済的なスタート条件は同じではありません。

毎月の返還があれば、その分だけ自由に使えるお金は減ります。貯蓄や投資、住宅取得、転職、結婚など、20代以降の選択にも影響する可能性があります。この差は外からはほとんど見えません。

大学受験では偏差値という「見える数字」に注目します。しかし、その裏側には、家庭が教育にいくら使えたのか、大学4年間を誰のお金で過ごしたのか、卒業時にいくら返還義務が残っているのかという、偏差値表には載らない数字があります。

社会人になった瞬間から、「これから資産をつくる人」と「まず教育費を返す人」がいる。これもまた、大学進学率や偏差値だけでは見えない教育格差の一つではないでしょうか。

【注意】

※本記事でいう入試難易度は、河合塾Kei-Netのボーダーラインを参考にしています。ボーダーラインは入試難易度を示すもので、大学の教育内容、研究力、卒業生の能力、就職価値などを評価するものではありません。

※JASSOの学校別情報についても、JASSO自身が各学校の一側面を示す情報であり、学校間の単純比較には注意が必要としています。

※記事中の2023年7月公表データは、当時の貸与者数と在籍学生数をもとにした参考値で、2026年現在の利用率ではありません。

※貸与型奨学金の利用には、家庭所得だけでなく、学費、住居費、専攻、大学独自の支援制度、給付型奨学金、授業料減免など複数の要因が関係します。

※奨学金制度は変更されることがあります。実際に利用を検討する際は、JASSO、文部科学省、在籍大学の最新情報を確認してください。

【参考サイト】

独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)「学校毎の貸与及び返還に関する情報」
JASSO「令和6年度学生生活調査」
河合塾Kei-Net「入試難易予想ランキング表」
文部科学省「高等教育の修学支援新制度」

東京大学「2023年度学生生活実態調査」
慶應義塾大学「奨学金」
早稲田大学「奨学課」

貸与型奨学金は「もらうお金」ではなく、卒業後に返すお金です。日本の奨学金制度で貸与型が大きな割合を占めている背景は、こちらの記事でも詳しく解説しています。

ABOUT ME
筒井直子|Money Compass 編集長
筒井直子|Money Compass 編集長
出版社勤務30年以上/Money Compass 編集長
慶応義塾大学卒業後、大手出版社で30年以上、編集者として書籍・雑誌に携わってきました。Money Compassでは、家計・投資・教育費・税金・制度など、人生のお金に関わるテーマを、公的機関や一次情報を確認しながら生活者の目線でわかりやすく解説しています。
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